8.01.2015

エネルギー、車、テスラと変える世界 ---15

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以下は、このリンク先の記事 http://waitbutwhy.com/2015/06/how-tesla-will-change-your-life.html を私が勝手に解釈して書いています。オリジナルの内容にできるだけ沿ったつもりですが翻訳ではありません。


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テスラ・ストーリー(その2)



自動車会社はシリコンバレーで生まれるはずじゃないし、シリコンバレーのスタートアップは車をつくるはずじゃないんです。


でも、電気自動車業界は、おじいさんの世代の自動車業界じゃありません。それどころか、2003年当時は誰の業界でもなかったのです。1990年代にカリフォルニア州がゼロエミッション規制を敷いてから、しばらく電気自動車のプチバブルが起こりました。しかし、数年後に圧力をかけられてその規制が解除されるとバブルは萎み、そこここのガラージとカーギークのテックラボに散らばって、忘れられてしまいました。でも、
アップル、グーグルなど、本当にビッグなものが、そこここのカリフォルニアの最先端ギークラボから生まれてきています。電気自動車会社が生まれても不思議じゃないですよね。


このような小さいカー テック カンパニーの一つにAC Propulsionがありました。デトロイトや、日本、ドイツの自動車メーカーが、将来の車はどう考えても電気自動車ということに気付かない間に、AC Propulsionの輩たちは、いろんな事を試しながら、EVのブレイクスルーを次から次へと生み出していたのです。


先週、私(ティム)はいきなりAC Propulsionに電話をかけて、始業当時から会社にいるCTOのPaul Carosa(ポール・カロサ)に話を聞かせれくれと頼んでみました。彼はとても
礼儀正しい人で、電話を切ってしまうのは気が引けたらしく、1990年代後半から2000年代前半にかけて、飛び抜けてカッコいい車を作った時のことを話してくれました。その車はtzero(Tゼロと発音)といいます。AC Propulsionは2つの大〜きな問題を解決しました。


まず、tzeroは早かった。0から60(スタートから時速60マイル)にわずか4.9秒。電気自動車としては驚異的、また速いガソリン車に匹敵する速さでした。


次に、バッテリーのイノベーションに力を注いで、EV最大の短所の一つを克服するのに大きな進歩を遂げました。それまでのEVは、重くて制限の多い鉛酸バッテリーを使っていました。AC Propulsionは、ラップトップや携帯電話業界が、小さな18650リチウムイオン電池の効率を良くしようと努力した結果、その性能がグーンと上がっているのに目をつけました。18650電池は単2電池のようなもので、一見、車とは無縁のシロモノに思えますが、
これを何千個も大きなバッテリーケースに並べることで、群を抜いて世界一の車のバッテリーを作り出したのです。それまでのEVの走行距離は、60から80マイル、せいぜい走っても120マイルに限られていましたが、tzeroは、一回の充電で250マイル走ることが出来ました。


一方、2003年、EV作りに熱中していたJB Straubel(JB ストラーブル)というカリフォルニアのエンジニアが、自身の車のプロジェクトの資金を乞おうとイーロン・マスクに会いに行きます。ストラーブルは、
その後すぐマスクをAC Propulsionに連れて行き、tzeroを見せます。マスクはこれに驚嘆!EVが車の将来だろうと思い続けていたマスクは、その可能性を目の当たりにして、確信を固めました。


当時、マスクは既にSpace X(スペースX)を率いていて、火星を植民地化しよう(ではないですが、いつものティムのジョーク?)としていたので、自動車のスタートアップを始める時間の余裕はありませんでした。でも、マスクは世界にtzeroを見せたい、これを見れば、
絶対に人々は興奮して、EV開発の大きな波が起こると思ったのです。マスクはAC Propulsionに、自分が資金を出すからtzeroをマーケットに出してくれと説得しました。しかし、AC Propulsionはそんな厄介なことはしたくないと断り、代わりに、マスクを以前同じような提案をして断られた3人の起業家に紹介しました。Martin Eberhard(マーティン・エバハード)とMarc Tarpenning(マーク・ターペニング)ともう一人の3人は、AC Propulsionのテクノロジーライセンスを取得して、Tesla Motors(テスラモーターズ)という会社を作り、自分たちで市場に出そうとしていたのですが、これにはまず資金が必要だったのです。パーフェクトマッチ!協力して事を進めることになりました。このプロジェクトにフルタイムでなくパートの時間しか使えなかったマスクは、資金を出し、チェアマンになり、大きい影響を与える。一方、エバハードがテスラのCEOになってプロジェクトの指揮をするので、マスク自身は殆どの時間をスペースXにフォーカスできる。テスラはこうやって動き始めました。


チームは、どうやって自動車会社を作っていくか検討し始めました。
大きな課題の一つは、新しいテクノロジー問題。新しいテクノロジーは初期のR&D費用が莫大にかかるので、初期製品はとても高くなります。初期の携帯やコンピューターが、とっても高かったのも同じ理由からです。でも、携帯やコンピューターは、それまでにない全く新しい種類の製品だったので、すごく高くても売る事が出来ました。けれども車は違います。とっても使いやすい、手頃な値段のガソリン車が既に市場に溢れていたので、$25,000と同レベルの車を$100,000以上で売れる訳がありません。そこで、このビジネスプランで行くことに決めました。


ステップ1: スーパーリッチ用に、高額の超高級車を少量つくる
まず、最初に高い製品をつくる。でも、豪華でその値段を出しても惜しくないような高級車にする。フェラーリに真っ向に対抗できるような、$100,000以上の値段をつけても当然な
車を作る。

ステップ2: リッチ用に、中額の高級車を中量つくる
ステップ1で作った利益をつぎ込んで、ステップ2の車を開発する。まだ高いけれど、フェラーリでなく、ベンツやBMWのクラスで、$75,000程度。

ステップ3: 一般用に、低額の大衆車を大量つくる
ステップ2で作った利益をつぎ込んで、$35,000程度の車をつくる。政府のEV補助金$7,500と、ガソリン代の節約で、ミドルクラスにも手頃な値段とする。

いわば、ハーシーキスチョコのビジネスプランです。








世界一の自動車会社を作るなんてことは
ミッションではなかったのです。目指したのは、長い間EVの開発と普及のネックになっていた数々欠点を克服し、信じられないくらいスゴイ車を作ることで、EVに何ができるのか、EVってどんなものなのか、人々の認識を変えて、世界中の大手自動車会社が、優れたEVを作らざる負えないよう仕向けることでした。テスラの最終目標、公式ミッションは、“to accelerate the advent of sustainable transport by bringing compelling mass market electric cars to market as soon as possible.”「(説得力のあるEVを市場に出し、)世界の持続可能な輸送手段へのシフトを加速すること」言い換えれば、EVの時代はいずれ来ます。私たちはそれをもっともっと早めたいのです。“より早く”がここでは大事です。早ければ早いほど、炭素排出が早く減らせるし、長期にわたる悪影響からのダメージを減らすことが出来るのですから。


こうやって仕事に取り組み、4年後にステップ1の車を作り上げました。ロードスターです。



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ロードスターをテスラの長期主要モデルにしようという計画は、最初からありませんでした。ある社員によると、マスクは当初から、会社の長期ミッションは「お金持ちのおもちゃを作ることじゃない」と、従業員全員が理解するよう務めていたということです。彼らは、とにかくスッバラシイものを作りたかったのです。A) EVがどんなにスゴイのか世の中に見せたかったし、B) 収益を上げてステップ2の車を作りたかった。だから、ボディーデザインは全くオリジナルにせず、かわりにロータス・エリーゼを元にデザインしました。


ロードスターは世界を変えませんでした。$100,000以上する車で世界は変えられません。でも、テスラは本物だというメッセージを業界に送ることは出来ました。2006年にロードスターが発表された時も、2008年に納品され始めた時も、一般にはほどんど知られなかったかもしれませんが、大手自動車会社の数社の目を引きました。ロードスターが出てきたすぐ後、日産は電気だけの電気自動車リーフを立ち上げ、GMはプラグインエレクトリック(ハイブリッド)のChevy Volt(シェビーボルト)を立ち上げました。当時、GMの会長だったBob Lutz(ボブ・ルッツ)は、ボルトを作ったキッカケは
テスラだと公に言及しています。ロードスターが発表された後、「カリフォルニアのちっぽけな会社ができるのに、私たちが出来ないはずはない。」とGMのボードに持ちかけたそうです


しかし、当初の製品作りは問題だらけ。車を作るのに予定よりもかなりの時間がかかったし、ロードスター一台一台のコストも予算をかなりオーバー、更に初期の納品は欠陥もたくさんありました。マスクはこれを悲しみ(?)、彼とボードはCEOのエバハードを首にし、これはエバハードを悲しませました(?)。ちょうど、こんなことが起こっている最中、最悪に都合の悪いことが起こります。2008年のリーマンショック不況です。これは、自動車業界全体にも打撃を与えましたが、中でも特にテスラにはタイミングの悪いことでした。テスラはまだブランド認識もなし、利益もなし、ところが、巨額の先行投資は既に終えていました。壊滅的な不況はもちろん多くの人や会社を窮地に追い込みましたが、特にテスラにとっては、最悪に悪いタイミングだったのです。


マスクは2番目のCEOを雇いましたが、一年も経たない2008年末には、テスラの状況は、こんな映画のシーンを目の当たりにしているようなものでした。 “誰かがひどい大怪我をして今にも死にそうな状況。ドラマチックな言葉が交わされ、死にかけている人が何か最後に一言を言おうとする。あ~これが最後?もう死んじゃったのかな?あっ、またなにか言っている。あと一言二事は言うかもしれない。。。” 死にかけているのはもちろんテスラ。マスクは、「この映画をストップして!早く止めて止めて!」このまま他人に任せて見殺しにはできないと、CEOのポストを取って代わり、
猛烈にフルアドレナリンモードで、会社を生き延びさせようとしました。別の記事にも書いたように、ちょうど、スペースXも、同じ時、同じ映画で同じ役を演じていたので、当時のマスクはこんなだったのです。










でも、テスラはスゴイって感銘していた人達がいて、その中の数人が、もう危機一髪という時に貴重な投資をしてくれ生き延びることが出来たのです。そうして、この混乱から這い出てきた時には、イーロン・マスクがCEO、
カーデザイナーFranz von Holzhausen(フランツ・フォン・ホルツハウゼン)がチーフ・デザイナーの新しい会社に生まれ変わっていました。フォン・ホルツハウゼンは、車業界のJonathan Ive(Appleのジョナサン・アイブ)、花形デザイナーのようなスターです。GM、その後マツダのデザインディレクターでしたが、当時かろうじて立っているテスラに自分のキャリアを賭けたのでした。


私(ティム)は、数週間前フォン・ホルツハウゼンに会いに、テスラのデザインスタジオに足を踏み入れた時、
すっごく派手なセレブのカーデザイナーに会えるとワクワクしていました。”きつ〜いドイツなまりの英語をちゃんと理解できますように〜”と願っていたのです。ところが、彼はごくごく普通の態度のアメリカ人、ほんとにがっかり(苦笑)。


ピカピカのデザインスタジオは、アートとフィジックス(物理)のまるでプレイルーム。フォン・ホルツハウゼンは、数年後にデビューするモデル3の実物大粘土模型を見せてくれ、車のデザインでは、全てが精密であることがどんなに大事なのか、1ミリの4分の1の違いが、車全体にどんなに広がってしまうのか話してくれました。2種類のモデルを同時にテストするため、模型は半々に作られていました。


大手の自動車会社に何年も務めた後、テスラに来てどう思うのか聞いたところ、違いをこのように言っていました。“GMの様な会社は財務主導なので、財務の期待に絶えず答えなければならない。でも、我々の見方は逆。製品が素晴らしいと成功し、その結果、会社も素晴らしくなる。” これは、マスクが私に言ったことによく似ています。「会社のリーダーが、数字自体に価値があると思った瞬間に会社はダメになる。CFOがCEOになったら会社はおしまい。ゲームオーバーだ。」フォン・ホルツハウゼンはこう続けました。“もう一つの違いは、他社ではエンジニアが先に来ること。デザイナーは、デザインパッケージを渡されて、ビューティフルにしなさいと言われる。テスラでは、デザインとエンジニアリングは同等の価値を与えられ、マスクが双方を常に対立させて切磋琢磨させる。” テスラで製品作りに夢中になれる自由に慣れたフォン・ホルツハウゼンは、全く時代遅れの、以前のやり方には戻りたくないと言います。


フォン・ホルツハウゼンのテスラでの最初のミッションは、ステップ2の車(中価格で中産量のモデルS)をデザインすることでした。既成のデザインをもとにしたロードスターは、会社の長期の定番商品ではなく、スプリングボードになる製品でしたが、モデルSはテスラ最初のフラッグシップ、主要製品です。まっさらな状態から車のコンセプトを作り変えるチャンスでした。フォン・ホルツハウゼンはこう言います。「モデルSを始めた時は、全く白紙の状態だった。」


これらは、スティーブ・ジョブズのアップルでのやり方と不思議なほど似ています。彼は異常なほどに素晴らしいプロダクトを作るのに熱中し、他の会社がしてる事など気にもかけず、常にまっさらな白紙の状態から事を始めました。アップルが電話機を作ろうと決めた時、ブラックベリーの改良版を作ろうなどとは思わず、携帯電話はどうあるべきか?という疑問からスタートしたのです。


時が経つと、巨大になった業界はたるみ、創造力を失い、リスクを避けるようになりがちです。実行力と創造力に長けたアウトサイダーが出てきて、フレッシュな見方で取り組んで、全体を
根本から考え直したやり方で、慢性化した業界にチャレンジすれば。。。そこに大きなチャンスがあります。


iPhoneが出てきた時には電話機業界はひっくり返りました。モデルSが登場した時に、コンシューマ・レポートが、これまでになかったベストカーだと賞賛し、前代未聞の99/100レーティングを与えたこと。また、テスラのオーナーは皆テスラに熱狂的なのは驚くべきことでしょうか?もちろん、Noです。だって、iPhoneのように、モデルSは、
15年飛び越えた将来の車なのですから。
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モデルSは、0から60マイルに3.2秒で到達する、今までで一番早い4ドアセダンです。アエロダイナミックもめっちゃ良く(業界で最良値の抵抗係数0.24)バッテリーのパワーを節約します。エンジニアリングのイノベーションの数々を評価され、アメリカの政府エージェンシー、NHTSA(米国の道路安全交通局)
がテストした結果、5スターレーティングなのに、最高の、5.4スターを受けました。


モデルSは既に自動運転を始めていますが、近いうちに、毎朝、快適な温度に調整し、ムードにあったミュージックを流して、ドライブウェイであなたが出てくるのを待ってくれるようになります。また、毎晩、家に帰って来て車を出ると、自動でガラージに駐車して、電源につなげて充電してくれる。何年型モデル(例えば、2014年型トヨタカムリ、2015年型トヨタカムリ)という仕組みも使っていません。新しい機能を次の年の新型モデルが出るまでホールドしておかないで、使えるようになったら順次に追加していきます。だから、今日買うテスラは、2週間前に買ったテスラとは僅かに違うかもしれません。また、常に、修正や新たな機能を、自動WiFiソフトウェアアップデートでロールアウトしています。テスラのオーナーは、"朝、目を覚ましたら、車が新たな機能を備えているのに気づく”なんてことがよくあるのです。


テスラには、技術的に不可能と思われていたり、業界で制限されて出来ないことなどでやりたいことはたくさんありました。それを可能にする為、作らないとならないものは自分たちで作って
、克服し実現していきました。例えば

バッテリーは非常に重いので、それを補うためにボディーは超軽量にしなければならない。そこで、スペースXの先端ロケット技術を使って、北米で唯一の全アルミニウムボディーを取り入れた。

イーロン・マスクとフォン・ホルツハウゼンのチームは、車のデザインをパーフェクトにしようと長い時間没頭し、妥協せず、とことん追求するやり方に慣れていたので、ドアハンドルを取り付ける段階になった時も、完璧なボディーを台無しにしたくなかった。そこで、苦心を重ねて、ハンドルがドアから突出せず、平たく収まるようにした。

ディーラーシップの販売モデルが気に入らず、カスタマーに直接売ろうとしたが、直売を禁止する多くの州の法律に阻まれた。それで、禁止している州に戦いを挑み、一州一州、法律を覆している。

ツマミやボタン類をなくしてしまって、大〜きな17インチのタッチスクリーンで全てコントロールしたかったが、最初の車をデビューされる前は、まだiPadもなく、車に適した17インチのスクリーンなどなかったので、自分たちで作った。


このようなイノベーションの数々が、テスラを並外れて優れた車にしてきました。しかし、電気自動車の大きな短所をどうするのかという疑問はまだ残っています。前にも言ったEVの3大課題の内の2点(パフォーマンスとバッテリーによる走行距離)は、AC Proprusion が大きな前進を遂げ、テスラチームは、そこから更に進歩を続けています。今や、パフォーマンスは、セダンの中で世界一。バッテリーの走行距離は、一回の充電で208から270マイル(モデルによる)と素晴らしい数字を出しています。


でも、まだ、答えなければならない疑問が2つあるのです。:
ロード・トリップ(車の長距離旅行)ができるのか?
誰でも買えるのか?

テスラはその両方に取り組んでいます。



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廉子の注)テスラは、すごいスピードでイノベーションを進めています。既に、一ヶ月ちょっと前に出たティムのポストの内容にも古くなっている箇所がありますが、あえてそのままにしました。そういった点も含めて、近いうちに、自分のオリジナルポストで取り上げようと思います。


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