7.31.2015

エネルギー、車、テスラと変える世界 ---14

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以下は、このリンク先の記事 http://waitbutwhy.com/2015/06/how-tesla-will-change-your-life.html を私が勝手に解釈して書いています。オリジナルの内容にできるだけ沿ったつもりですが翻訳ではありません。


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パート3: テスラ ストーリー(その1)



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クリスティー・ニコルソンは、1989年に初めてパーティーでイーロン・マスクにあった時のことをこう語っています。

“彼の口から二言目に出てきたのは「僕、電気自動車についてしょっちゅう考えてるんだ。」そして、私の方を向いて「君、電気自動車のことを考える?」”


1989年当時に、電気自動車のことを考えてる人なんてほとんどいなかったはずです。どうして、その頃からイーロン・マスクはそんなに興味を持っていたのでしょうか?それを知るために、まず、電気自動車って何なのか、どんな仕組みで動くのか簡単に見てみましょう。

通常のガソリン車よりもグリーンな車は数種類あります。中でも一般的なのは、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車(electric vehiclesの頭文字を取って、EV)です。他によく話題にもぼるのが水素燃料電池自動車(hydrogen fuel cell car)で、ここでは水素自動車と呼ぶことにします。これら全てに共通しているのは、電気モーターで動くことです。

電気モーターには、ACインダクション モーターとブラッシュレスDC電気モーターの2種類があります。このポストを読んでいる読者の98%は、2つのモーターの違いは何なのか、詳しい説明を読みたくてウズウズしているとは思い難いので、ここでは、基本的な考え方は同じだと言っておきましょう。

電気モーターは、まるで pig in a blanket(パン巻きホットドック)に見えます。
外側のパンの部分(ステーター、固定子)は固定されていて動きません。電気がパンの部分に送られて、中のホットドックの部分(ローター、回転子)を回転させます。ローターは車軸に繋がっていて、これで車輪が回ります。こんな感じです:


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ACインダクション モーターって、どうやって動くの?

一般的な電気モーターは2種類ありますが、その一つがACインダクション モーターです(テスラはこのタイプを使っています)。AC(alternating current)は交流電流の事です。インダクションは直接接触がなく、
誘導されることなので、ステーターとローター(パンとホットドック)は接触しません。代わりに、ステーターに流れてくる電流が回転磁場を生み出し、それがローターを誘導して回転させます。

ステーターは三相系(3フェイズシステム)に電流を流して回転磁場を作ります。

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上の図では、3つの別々のワイヤーコイルが、赤青緑で表されています。それぞれに時間差で交代に電力が流され、前へ後へプッシュ/プルする力が生まれます。赤色矢印を見てください。1時の方向から7時の方向へ、矢印の先が行ったり来たりしている様子がわかるでしょうか?青も緑も同じです。

よーく見ると、赤矢印の先が7時に一番近い時は、右上グラフの山型の赤線が一番低くなり、1時に一番近い時、一番高くなります。このグラフはそれぞれがプッシュ/プルする力を示しますが、3つのコイルの力を合わせると、どの時点でも一定です。

3つのワイヤーの電流は、ステーターの中で3つ合わさった引く力が、スムーズな円を描くようにに丁度良い具合にずらしてあります。ここにローターを加えると、回転磁場の引く力で回転するのです。



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ローターは電磁場に引かれて追いつこうとしますが、いくら追い続けても追いつかず、延々と回り続ける訳です。この追っかける力が車を動かします。ACインダクション モーターはNikola Tesla(ニコラ・テスラ)が発明しました。テスラモーターズの名の由来です。


                                                                                                                                  





先にも言ったように、電気モーターを使う車は4種類あります。


Hybrids、ハイブリッド車 (HEVs)ハイブリッド車はトヨタのプリウスに代表されます。
内燃エンジンと電気モーターの両方を搭載していますが、電源コンセントから電気を得ることは出来ません。代わりに、走行中にガソリンを電気に変えて電池を充電します。また充電の補足をするのは、回生ブレーキという電気モーターの賢いトリックです。通常、車が走っている時に発生する力学エネルギーのジュールは、ブレーキをかけた時には、熱となって失われてしまいます。その失われるジュールの一部を、回生ブレーキを使うことによってバッテリーに戻し、後で使うことができるようにしています。こういった電気の部分が、燃やすガソリンの一部の代わりをし、燃費を伸ばし、排気を減らし、ガソリン代を節約させてくれます。通常のガソリン車に比べると、ハイブリッド車は、かなりのステップアップ テクノロジーです。

でも、まだなんかイマイチなんですよね。どうしてでしょう?ハイブリッド車は排気問題を減らしてはくれますが、解決してはくれません。結局、ガソリンを燃やさないと走らないのです。「世界中の車が100%プリウスになっても、まだ、世界は100%石油中毒のまま」だと聞いたことがありますが、うなずけます。


Plug-in hybrids、プラグイン ハイブリッド車(PHEVs)その点、プラグイン ハイブリッド車はベターなオプションです。Chevy Volt、ホンダアコード プラグイン ハイブリッド、Ford Fusion Energiなどは、自宅で充電したバッテリーで10から40マイル走行する事が出来ます。バッテリーがなくなるとガソリンで走りますが、普通の人はバッテリーだけでほとんど通常の用事を済ますことができるので、ガソリンを使う頻度がかなり減ります。

でも、ほとんどガソリンなしに出来たのなら、いっその事全くなくしてしまえば?と思いませんか?


Hydrogen cars、水素自動車 
水素自動車はガソリンなしで電気で走りますが、バッテリーは使いません。ですから、自宅で充電も出来ません。ガソリン燃料の代わりに圧縮水素燃料を、ガソリン車のようにステーションで注入してもらいます。水素は空気中の酸素と結合して電気を作り出し、それを電気モーターに送って車を走らせます。この結果できる副産物は水だけなので、テールパイプからの排気はゼロです。とっても、良さそうですよね。

イーロン・マスクは、どう頑張っても、どうして水素自動車の方が良いと主張できる人がいるのか理解できないと言います。一方、トヨタ、ホンダ、GMをはじめ、多くの自動車会社は、多額の投資をして水素自動車を作ろうとしています。どうも、どっちがどうなのかよくわかりません。どうして、意見がこうも食い違うのか理解したかったので、水素自動車のテクノロジーについて、賛成、反対意見の両方あわせて12の記事を読んでみました。読み終えてみると、電気自動車(EV)よりも水素自動車の方が将来性があるとはとても思えないのです。(この点の詳細を知りたい人は、下に注があります。)


最後に、Electric cars、電気自動車(EVs) 日産リーフ、BMW i3、 Ford Focus Electric、Tesla Model S などで、仕組みはいたってシンプルです。大きなバッテリーがあり、それを充電して電気モーターを回して走ります。液体(
ガソリン、オイル、その他)は全く必要ありません。 



EVsを使うこと
は、理論的に全く理にかなっています。EVsの他の点はちょっと置いておいて、内燃ガソリンエンジンに比べて電気モーターの利点を見てみましょう:


電気モーターはガソリンエンジンより殆どの場合便利 ガソリン車はガソリンスタンドに行かなければなりません。EVはスマートフォンのように、毎晩自宅で電源コンセントに差し込んで充電できるので、スタンドに行かなくてもすみます。ガソリンエンジンは200以上のパーツからなりとても複雑ですが、電気モーターのパーツは10以下、とてもシンプルです。ガソリンエンジンで走らせるには、トランスミッション、テールパイプ、ギア、その他たくさん油まみれのモロモロが必要ですが、EVはそんなものはいりません。車のフッドを開けると、エンジンやラジエーターなど、見慣れた諸々は何もなく、トランクのように荷物を入れるスペースがゆったりあるだけです。ガソリンエンジンにはオイルが必要なので、オイル交換しないといけませんが、EVにはオイルもオイル交換もありません。ガソリンエンジンはかなり複雑な分、EVよりももっとたくさんメンテが必要です。


電気モーターはガソリンエンジンより安く動かせる オイル交換やその他多くのメンテや修理にかかる費用は考慮しないで、エンジンを動かす燃料だけ比べても、ガソリンのほうが電気よりもずっと高いです。数字を見てみましょう。

電気自動車は平均して、電気1kWhあたり3マイル走れます。アメリカの平均電気料金は1kWhあたり12セントなので、電気自動車は平均して1マイルあたり4セントで走ります


ガソリンの値段は変動が激しく、ガソリン車は種類によって燃費が大幅に違うので、ガソリン車を走らせるコストを計算するのはもっと大変なのですが、ベストケースを想定して、異常に安い($1.40/ガロン)ガソリンを、異常に燃費の良いガソリン車(35mpg)をに入れたとしたら、1マイルあたり4セントになります。これは、電気自動車と同じレート。でも、4セントでガソリン車を走らせることができる状況にいる人はほとんどいません。では、極端な例ではありませんが、ワースケースを見てみましょう。高めの($4.00/ガロン)ガソリンを、燃費が平均以下のガソリン車(15mpg)に入れたとしたら。。。1マイルあたり27セントになります。

通常の年間走行距離12,000マイルにこのコストを当てはめると、ガソリン車の燃料コストは、最もベストなケースでも電気自動車と同じ、ワーストケースは年間$3,000も高いということになります


ガソリンエンジンは、長期に渡るエネルギー危機と気候問題の、2大要因の一つ 以前話したように、ガソリン車など輸送セクターが燃やす石油は、世界の排気の3分の1を出し、都市を汚染し、国々を他国に異常に依存させる原因になっています。一方、電気モーターは何も排出しません。今は汚い方法で発電された電気で走ってはいますが、これについては後で触れます。


だから、
イーロン・マスクはクリスティー・ニコルソンに、「しょっちゅう電気自動車について考えてるんだ。」と言ったのです。車を走らせるのには、ガソリン車よりも電気モーターを使う方が、今でもより便利で、より安い。しかも、私たちやこれから先の人類の将来を考えると、どちらが賢明なのか。。。答えは明白と思いませんか?



100年以上前に電気モーターが初めて出来た頃、広く普及するのを妨げた重大な欠点が3つありました。その後電気自動車の生産は途絶えてしまったので、それらの欠点を解決する事に、ほとんどお金も時間もかけられていません。電気自動車の実用性を懸念する原因と、長い間言われて来たことは次の3つです。


EVの問題点1)走行距離 実は、3つの点がひとつになった問題です。

A) バッテリーの容量が小さいので、長距離走行できなくて、EVは近場を走ることにしか使えないのか?

B) 走ってる途中でバッテリーが上がってしまったら、充電する所があるのか?それとも、立ち往生せざる終えないのか?

C) 途中で充電する所が見つかったとしても、バッテリーが充電するのを5時間も待ち続けなければならないのか?

EVを買おうかと思っている人たちが、皆心配することなので、range anxiety(走行距離不安性)という特別の名前まであります。


EVの問題点2)パフォーマンス 現在、もっとも広く使われている電気自動車はゴルフカートです。これでは車のオーナーはエキサイトしてくれません。誰も走りが最低な車を欲しいなんて思いませんよね。アクセルを踏んで、ズーンと加速する車って聞いたら、皆ガソリンのスポーツカーを思い浮かべて、電気自動車を思う人はまずいないでしょう。


EVの問題点3)値段 初めてできた当時から、バッテリーの値段が高かったので、EVはガソリン車よりも高いでした。


1910年当時も、電気自動車の問題点として、人々は上の3点を上げていました。克服できなかったので、ガソリン車に負けたのです。ガソリン車も別の大きな問題を抱えてはいましたが、フォードがなんとかそれを克服して実用化させました。電気自動車に同様のことをした人はまだいません。



私(ティム)が、ヘンリー・フォードのことをどう思うか
イーロン・マスクに尋ねた時、彼はこう答えました。「フォードは何か障害があれば、それを避けるか乗り越える方法を見つけてきて、事を成し遂げることが出来た男だった。彼はカスタマーが本当に必要としていることにフォーカスし続けた。彼ら自身何が必要かわかってない時でさえだ。」

2003年に、
イーロン・マスクが電気自動車の事を考えてばかりいるのをやめて、実際に作ろうと決めた時には、成功する見込みはほとんどありませんでした。1世紀近くもスタートアップが成功するのを妨げてきた自動車業界の高いバリア; 炭素排気コストが計上されていないので、電気自動車メーカー作りに全く不利。バスケットボールの試合で、ルーキーとして奮闘しようとしますが、自分以外のベテランプレーヤーは、ペナルティー無しでいくらでも反則できるという理不尽なルールの中でプレーするようなもの; 石油を使わなくても済むように世の中を変えていこうという動きを、ことごとく踏みにじる巨大な石油業界の圧力; その上、EVは新しいタイプの車です。1世紀も前、EV業界がタオルを投げてから開発のポーズボタンが押されたままだったので、気が遠くなるような努力と、巨額を投じてキャッチアップし、上にあげた3つの問題を全て解決して、やっと、なんとかやっとスタート地点に立つことができるのです。

今まで電気自動車が成功しなかったのは、これら3つの問題が解決不可能だからでしょうか?それとも、適した人(電気自動車のヘンリー・フォード)が現れなかったからなのでしょうか?



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注) 電気自動車に比べて水素自動車が劣っている点はいくつもありますが、その中の4つ:

1、水素自動車は、水素燃料を作るのに天然ガス(化石燃料)のお世話になるように見受けられます。一方、電気自動車は、発電がクリーンになるにつれて年々クリーンになります。

2、エネルギー密度、走行距離、コストを見た時、水素セルの予想されるベストケースは、現状のEVバッテリーとほぼ同じ程度。一方、EVバッテリーは今後も改善され続けます。

3、水素は、割りと危険で扱いにくい物質です。その点、簡単に壁のコンセントから電気を取れるEVに比べると雲泥の差があります。

4、そのうちに、自宅のガラージで車を充電するのが普通になると、わざわざステーションに行って燃料を入れてもらわないといけないのは時代遅れと思われるのでは?



水素自動車に関してメールを交わした時、イーロン・マスクはこう説明しました。:

ソーラーパネルで発電された電気でバッテリーを充電すれば、〜90%の効率が得られる。シンプルだし安い。一方、同じ電気を使って、水を分解して、極めて純度の高い水素を取り出し、気が狂うほどの圧力をかけ(液化するなんて、それ以上もっての外)、車の中の大きな水素ストレージタンクに移し(液化の状態であっても)、それから酸素と結合させて電気をつくると、〜20%の効率が得られれば良いほうだ。高くて複雑、かさばるし効率がものすごく悪い。どの角度から見ても負け。パックスワップを考慮に入れれば、燃料補給時間でも負けになる。

燃料電池はコスト面で劣る。でも、これは他に多くある欠点の一つに過ぎない。もし、燃料電池にリチウム電池よりも優れた点があるのなら、せめて人工衛星(中には$500ミリオン以上するのもある)に使われてもいいはずだが、それもない。



最後に、水素自動車の論議を、かなり詳細に、かつ衝撃的に解き明かした(こき下ろした)記事を読んで、私(ティム)の確信は固まりました。どうして日本の会社がこの道を進み続けるのか、全く不思議でたまりません。


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(この部分は、日本語を書いている廉子のつぶやきです。。。今までトヨタ車をずっと買い続けてきて、いまでもレキサス、シエナ、プリウスの3台が家にはあります。丈夫で壊れない頼りになる車を作り、改善を続けて無駄も減らし、エコカーのマーケットもリードして来たトヨタ。水素自動車にこれだけ力を入れていて、強気の発表も続いているので、きっと私たちにはわからない何か技術的な確信を持っているのだと思い続けたいです。

でも、私自身、いろいろ読んできた中で、「やっぱり水素自動車が将来を担っていく車だわ」と確信させてくれた記事に出会ったことがありません。ほとんどがその反対です。水素自動車を非難している人には、エンジニアや科学者などが多いので、納得させられるようなデータ等があるなら、早めに出して欲しいと切に思います。彼らは、データに納得すれば、今まで信じていたことと違うことでも受け入れることができると思うのです。

もし、万が一(ないとは思いたいですが)水素燃料よりもEV電気の方が自動車を走らせるには将来があるという結果がでることでもあれば、トヨタの技術とパワーを使って素晴らしいEVを作るなり、もっと水素燃料が適した輸送セクターを革新するなどして世界を変えて欲しいと願います。

最終的には、電気自動車 v.s. 水素燃料車ではなく、再エネトランスポート v.s. 化石燃料トランスポートなのですから。)



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(Tim's original notes)

Among many reasons hydrogen cars seem inferior to EVs, here are four:

1) Hydrogen cars seem beholden to natural gas, a fossil fuel, in order to extract the hydrogen fuel, while electric cars get cleaner over time as electricity production gets cleaner.

2) When it comes to energy density, driving range, and cost, the best case scenario for hydrogen cells is similar to where EV batteries are now, and EV batteries will get better with time.

3) Hydrogen is a somewhat dangerous and difficult-to-handle substance that’s a nightmare compared to the simple wall-outlet electricity EVs use.

4) Down the road, when the norm is to charge the car up in your garage, it’s going to seem primitive to have to go to a station to fuel up.


In an email exchange I had with Musk about hydrogen cars, he explained it like this:

If you take electricity coming from a solar panel and charge a battery, you can get ~90% efficiency. Simple and cheap. Instead, if you use that electricity to split water, separate the hydrogen with extreme purity, pressurize it to crazy levels (or, even worse, liquefy), transfer it to a giant (even in liquid form) hydrogen storage tank in the car and then recombine it with oxygen to generate electricity, you would be lucky to get ~20% efficiency. Expensive, complex, bulky and super inefficient. It loses on every dimension, including refuel time when pack swap is factored in.

Cost is bad for fuel cells, but that is only one of many bad dimensions. If fuel cells were in any way better than lithium batteries, they would at least be used in satellites, some of which cost over $500 million. They are not.



Finally, if I wasn’t already convinced, this highly-detailed, fairly devastating takedown of the argument hydrogen cars left me feeling eternally puzzled about why the Japanese companies would want to go further down that road.


7.25.2015

エネルギー、車、テスラと変える世界 ---13

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以下は、このリンク先の記事 http://waitbutwhy.com/2015/06/how-tesla-will-change-your-life.html を私が勝手に解釈して書いています。オリジナルの内容にできるだけ沿ったつもりですが翻訳ではありません。


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車ストーリー(その4)


どうして自動車業界のテクノロジーは、これまで100年の間あまり進歩しなかったのでしょうか?


この2点が主な理由だと思います。

1) 新規に参入するバリアが異常に高いので、アンダードックが入り込む余地がない


新しい自動車メーカーをつくることよりも、大変で面倒臭そうなビジネスを他に思いつきますか?

まず初めに、車一台作って売れる状態になる前に、、、とんでもない額の資金をつぎ込んで工場を買い、車のスタイルはもちろん、使うパーツも全てデザインして、プロトタイプを作り、それを元にもっともっとたくさんの資本を集めて、もっと大きな工場を買い、何千人もの人を雇って、さらに何百万ドルもマーケティングにつぎ込んで、世の中に自分の会社の存在を知ってもらわなければなりません。。。こんなことをするには、自分自身が超金持ちで、よっぽどリスクに耐えられる人でなければなりませんね。自動車のスタートアップに投資するなんて、そんな笑っちゃうようなことに巨額をつぎ込んでくれる投資家などまずいないでしょうから。

次に、利益が出せるようになるには、同じデザインの車を大量に売る必要があります。先に言ったように、車作りには莫大な初期費用がかかりますし、数台作って売るにはマージンが薄すぎるのです。だから、“スッバラシイ!”だけでなく、たくさんの人が買いたいと思うような車を作らないと、自動車メーカーとして成り立ちません。

最後に、ガソリン車は既に最適化されています。無名のアンダードックが、熱帯雨林のキャノピーを下からスゴイ勢いで突き破ろうと思ったら、既に市場にあるものより「ズーッと優れたタイプの車」を作らなければなりません。最適化されたガソリン車の限界を突き破り、それが抱える最大の問題を解決する車。。。汚い排気を撒き散らし続け、どんどん皆のストレスを増やしている車の心臓部分 - エンジン問題にタックルし、解決する車です。ですから、単に長い間誰も成功していない自動車のスタートアップを成功させなければならないだけでなく、「いままで皆が作ってきたものとは異なる優れたタイプの車をつくるスタートアップ」を成功させなければならないのです。

これにチャレンジする人は、膨大な時間とお金を「今までにない優れたタイプの車」の研究開発につぎ込んで、業界全体の開発コストを背負わなければなりません。それに、どうしてこのタイプの車が優れているのか、どうしてこれを欲しいと思うべきなのか、世の中の人を教育するマーケティングのコストも背負わなければなりません。チャレンジする人が成功したら、彼らがたくさんの時間とお金を使って作り上げた消費者のデマンドに他の会社は乗る事が出来、優れたタイプの車は普及していくのです。

アメリカで自動車のスタートアップとして成功したのは、1925年(90年前)のクライスラーが最後だというのも、これでうなずけるでしょうか。ほとんど不可能に近い試みなのです。

こういう訳で、失うものが何もない野望に燃える起業家が作り出すワイルドなイノベーションが、熱帯雨林の下から突き上げてくる心配をする必要もなかった自動車業界は、長い間、しっかりと編み込まれた熱帯雨林キャノピーのキルトに寝そべって、必要な時だけ少しずつ前進しながら、贅沢にのどかにひなたぼっこを楽しんでいました。しかし、ここにも問題はありました。


2) 自動車マーケットのグリッチで、自動車メーカーの最適化が良い世界作りに繋がらない。


先にも言ったように、マーケットがオープンで的確かつ公正とパーフェストな時は、欲はマーケットを最適化する尺度となります。

会社は「どうしたらお金をもっとも儲けられるか?」など、置かれた環境で最適化するのにベストな方法を模索して物事を決めます。しかし、会社が最大の利益を追求することが同時に社会に役立つのは、会社の利益と、その製品やサービスが社会にもたらす価値が、きちんと確かに相関している時だけです。

例えば、私がレモネード・スタンドを始めたとします。とってもおいしいレモネードだったら、買ったハッピーなお客さんが友達に薦めたり、また買いに来たりするでしょう。私がポジティブな価値を提供して、ビジネスもそれと共に成長します。

成功 = もたらした価値 (インセンティブが連携している)

スタンドに来た他のお客さんに、もしハエが浮かんでるレモネードを出したとしたら、そのお客さんはもう二度と帰ってこないでしょうし、友達にも行くなって言うでしょう。害を与えたので、ビジネスも痛手を負います。

成功 = もたらした価値 ー 与えた害(インセンティブが連携している)

でも、もし、私がハエ避けになる薬品を見つけて、それをレモネードに混ぜたとしたら。。。薬品は無味無臭ですが、しょっちゅう飲んでいると、数十年先には健康を害するってことがわかっています。すぐに症状は出ないのでお客さんは気づきませんし、私のレモネードの評判もビジネスにも影響しません。

成功 = もたらした価値 ー 与えた害

与えた害は、計上されないコスト、別名negative externalityとなり、私のインセンティブとお客さんにとってベストなことが一致しなくなってしまいます。私の欲を満たして利益を上げることだけが目的だったら、私は薬品を使い続けるでしょう。だって、そうすることが経済的に奨励されるし、そのほうがお金が儲かるんですもの。

タバコ会社が何十年も人を殺しながら、その罪に問われなかったのは、こういったnegative externalityが理由です。顧客はタバコが健康にどんな影響を及ぼすか知らなかったし、悪い影響が出始めるのに何年もかかり、与えた害に対する罰を課す規則もなかったので、タバコが健康に及ぼす長期的なコストは計上されていませんでした。欲を追求して最適化する観点だけから考えると、タバコ会社は理性的に行動したと言えます。タバコの中のニコチンレベルを上げ、更に、フィルターに小さいガラスの破片を混ぜて、意図的に吸う人に細かい傷をつけ、ニコチンの吸収を促したのも同じ理由からです。タバコを吸う人に与える害は増えるけれど、需要も増えました。害は計上されなかったので、会社にとっては純粋にプラスになりました。そして、タバコ反対キャンペーンなど、タバコの害について顧客を教育しようとする運動が始まると、害に気づいた顧客が恐れをなして需要が減ることを避けるため、タバコ業界は、不誠実な科学者を雇って、反対キャンペーンの根拠と信憑性を疑う情報を流させ、メッセージがきちんと伝わらないようにしました。いつかは気づかれる事はわかっていたのでしょうけれど、できるだけ遅らせて害を隠し続けることが欲を満たす観点からみると良い選択だったのです。

人はこれを悪と呼びますが、タバコ業界はその時の環境パラメーターの中で、自分にベストな結果をもたらすよう行動しただけです。欲はいたって単純な動機で、何でも取れるものは取り、最も最適化するためにあらゆる限界をプッシュします。タバコを例に上げましたが、ファーストフード、放射線を出すコンシューマー・エレクトロニクス、政治家の行動、金融業界など、他多数にも同じことが言えます。


自動車業界では、二酸化炭素排出がnegative externalityです。もし、安くて簡単に作れる車が大気に汚物を垂れ流しても、誰もその支払いや償いを要求しなかったら、作り方を変えると思いますか?

先のタバコの話と同じで、タバコ業界とそれを支えるタバコ会社が、石油業界とそれを支える自動車会社に変わっただけ、短期の肺気腫の代わりに都市のスモッグ、肺がんなど長期の健康障害の代わりに、湾岸都市の水没などを引き起こす長期にわたる地球の気候や環境障害に変わっただけです。



http://www.telegraph.co.uk/news/science/science-news/9209597
Photo: ALAMY via The Telegraph http://goo.gl/u1Pw8m


多数の人が、炭素排気の隠れたコストについて書いています。そして、対立する政局双方の多くの人が、revenue-neutral carbon tax(歳入中立炭素税)というロジカルな解決策を提案しています。

歳入中立炭素税は、炭素税で政府の歳入が増えた分、所得税など何か他の税が同等に減るので、歳入中立となり、政治的に争う必要のないプロポーザルです。

石油の採取からガソリンスタンドまでのサプライチェーン中、どの時点で税金を課しても、ガソリン車を運転するのが高くなるか、石油ビジネスの利益が減るか(もしくはその両方)の効果は変わりません。炭素税は、炭素問題の助長に手を貸している人に、そのコストを支払ってもらううだけです。そして、消費者や会社が別の道を模索するのを手助けします。これは、政府が市場干渉をしているのでなく、市場のグリッチを修正しているだけです。

でも、そうする代わりに、政府は、電気自動車を買う人に税金を控除したり、再エネ業界に補助金を出したりしています。街中のビジネスが道路にゴミを捨てているのに、捨てたら罰金を払わせる代わりに、捨てなければお金をあげると言っているようなものです。以前政府は、自動車会社に排気量ゼロの車を最低何台つくるように強制して排出量を下げようとしましたが、効果は限られたものでした。ジミー・カーターもビル・クリントンもこの規制をある程度強制しましたが、どちらの場合も、次に来た大統領が(レーガンとブッシュ)が職に着くや、その規制は廃止されました。皮肉にも、クリントンが義務付けたハイブリッド車の規制に対し、アメリカの自動車メーカーは何も成し遂げませんでしたが、代わりに、恐れをなしたトヨタは必死にイノベーションに取り組み、プリウスを作り上げました。また、1990年にカリフォルニア政府は、独自のゼロ排気規制を敷こうとしましたが、これに対し、自動車メーカーと石油会社がカリフォルニアに不愉快な圧力をかけ続け、結局2003年に規制は廃止されました。巨大な会社は巨大な影響力を持っているので、政府が変えるために規制しようとしても、骨抜きにされて効果のないものになってしまうのです。

歳入中立炭素税は、どの政党のどの政治家も賛同できるはずなのに、まだ実現しないのは、ビッグ・オイルがアメリカ政府に影響を与えているからです。それ以外の理由は考えられません。

自動車業界の欲は、最適化するため、安全性、快適性、ドライブ・クオリティなどの技術を進歩させてきました。安全性やクオリティの評価レーティングが需要に直結するからです。しかし、炭素を排出しても何もネガティブな影響はないので、炭素の排出は変わりません。欲を満たす方式に、炭素のコストは含まれていないからです。

というわけで、フォード・モーター・カンパニー設立から112年たった今も、有害でオールドファションのエンジンを使っているのは、自動車業界にエンジンを変えたいと熱望させるようなプレッシャーがないという、単純な理由からです。自動車業界の最適化努力により、車は時と共に、より安全に、よりスムーズに、より快適に、より効率良くなってきました。しかし、現代の車の最も明らかな欠陥、大気中に常に汚物を排出していることは手を付けられずにいます。そうし続けても何も支払う必要はないし、ビッグオイルの影響力で政府はそうさせ続けてくれるだろうし、そして、下から業界の熱帯雨林キャノピーを突き破って、別の良い方法があるのを示してくれる人もいないからです。

怖いことです。何かとてつもなく悪いことが起こりつつあって、将来の私たちの生活を本当に脅かそうとしているのに、囚人のジレンマに陥ってしまっています。皆で協力して一緒に変える方が、ずっとずっといいことはわかっているのに、一人ひとりのCEO、ロビイスト、政治家個人には、このまま現状維持するほうが有利なのです。人々は「これが我々の子どもたちの未来なのに、自分たちが台無しにしてしまっている。」とよく言います。でも、何か変える力を持つ人たちにとっては、彼らが今稼げるだけ稼ぐほうが彼ら自身の子供たちにとって有利。。。行き詰まり状態です。

長い間深く根付いて停滞気味の業界は、長い間定着し凝り固まった王朝のようなもの。現状を突き破るのは大変なことです。でも、もっともパワフルなカースト制度でも、うってつけの人が、ちょうど良いタイミングで現れ、影響を与える事ができれば、革命に火がつくものです。


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7.24.2015

エネルギー、車、テスラと変える世界 ---12

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車ストーリー(その3)

「どうしてテクノロジーは進化するのでしょうか?」


「時が経てばテクノロジーも進化する」って自然に思うでしょう。だから「Xテクノロジーが進化しなくなったのはどうしてだろうか?」って疑問が湧くのです。でも、これは思い違い。テクノロジーはそのままでは進化しません。私(ティム)のタイム・ワーナーのDVRも、2004年当時から、全く変わらない相変わらずひどいユーザー・インターフェイスのままです(Ha!)。テクノロジーは、何もなければ同じ状態を維持しようとします。何らかの圧力がかかって初めて前進するのです。

私たちは、生物の進化についても同じような勘違いをしがちです。自然淘汰は何かを“良く”するのではなく、たまたまいる環境で、生き残るのに最適に生体を変化させるだけです。環境の何かが変わると − 例えば、天敵が突然変異して素早くなったり、特定の食べ物がなくなってきたり、氷河期が訪れたり − それまでの環境に最適だったある種の生物の生体が、最適でなくなってしまいます。環境の変化が、自然淘汰の基準を変えてしまうのです。変わってしまった基準がそれぞれの種の生体に圧力をかけ、時が経つにつれ、その圧力に種の遺伝性が反応して、新しい環境に最も適するよう変わっていくのです。

自然の生物の世界は、永遠のワイルド・ウェスト(西部の開拓時代)それぞれが生きのびるために何でもする無法の社会です。同様に、テクノロジーにとっての自然な環境は、完全に自由でオープンなマーケットです。でも、自然界と異なり、人間の社会には神(御上?)のような政府があり、これも影響を与えます。だから、何がテクノロジーを変化させるのか突き止めるには、次の2つの圧力を理解することが必要です。常に栄えては衰えと変わりながら、関連するもの全てに圧力をかける自然なマーケットのコンディションと、人工的に環境を変えて、特定の圧力を作り出す政府という御上の2つです。その両方を調べてみましょう。まずは政府から。


1) 政府が意図的に環境を変えて引き起こすプレッシャー


神(御上?)である政府の性質やマーケットに与える力は、世界中、それぞれの国によってかなりの違いがあります。北朝鮮では、なんでも知っていてなんでも見える全能の宇宙の支配者のような力を持っていて、自然な市場環境など存在しません。スカンジナビアの国々の神は、裕福な力強いお母さんのように温かく見守っていて、チャンスを与えつつ安全も確保するマーケットを持っています。中央アフリカでは、神はライフスタイルを変えて新しい仕事を見つけ、最も裕福な家族のために働き始めました。彼にとっては大出世です。アメリカの神は、アイデンティティ・クライシスに悩まされていて、自負心と自己嫌悪を行ったり来たりしています。最高の国である、ありたいと切に願いつつ、街角に一人で立って、一体どうするべきか大声で自問自答しているのです。

アメリカの政府(また他の似たような政府)が、神様の役を果たそうと、自然な市場環境を変え、特定のエリアに特定のプレッシャーをかけようとする時、使うツールは主に3つあります。財政支援、規制、税金です。

財政支援: 政府の財政支援が大きな進歩をもたらすには、その支援自体が莫大でないと始まりません。そういった膨大な支援は、オープンなデモクラシーでは、国民がこぞって同意するほど重大なことでないと起こりません。例えば、1960年代に国際社会への影響力を失ってしまうことへの恐れが、アメリカのアドレナリンを一挙に上げ、宇宙開発に巨額が投じられ、人類を月面に立たせました。同じような理由で、アメリカの有権者はなんとかアメリカの膨大な軍事力に合意できるので、その為の巨額な軍事費が、数々の産業のテクノロジーを前進させるのに大事な役割を果たしています。しかし、それ以外のケースでは、利害の対立や、政治的な小競り合いで分裂して麻痺状態のデモクラシーは、大事な技術革命の推進力になっていません。

規制: 民主主義の政府が持つもう一つの権威は、法律、制限規則、割当などのルールを作れることです。これらは、マイナーな事を変えるには効果的です。シートベルトもエアバッグも政府の規制から生まれました。しかし、自動車業界に限って言えば、政府の規制が引き金となって、メジャーなテクノロジーが飛躍的に進歩した例は思い当たりません。

税法: 政府はフリーマーケットに影響を与えるのに、 頻繁に税法を使います。何かを特定の方向に軽く突くには効果的ですが、大々的な前進にはほとんど繋がっていません。

もちろん、アメリカは政府がどれほどの権力と影響を持つべきか、大きな争いの真っ只中にいます。リベラル派は保守派よりも、政府がそれなりの役目を果たし、良い影響力を与えられることに割りと楽観的です。しかし、どちらも、政府がメジャーな技術革新を推し進めるのは、ソビエトとか今の中国のように、政府が強力な力を持っている国の話だと理解しています。オープン・デモクラシー社会では、ものすごいイノベーションは、通常、フリー・マーケットという大釜の中でフツフツと沸き起こり、下から突き上げてきて起こるのです。


2) 自然なマーケットが引き起こすプレッシャー


自然界では、自分の食べ物を確保し、天敵の餌食にならないように、動物はより早く、より巧みに走れるようになりました。地面近くで取れる食べ物が乏しくなると、飢えがプレッシャーとなって、時が経つにつれ、木に登ったり、首が伸びたり、翼が生えたりと遺伝的な特徴が変化しました。走っていた動物が飛べるようになったのは、別に「良く」なったわけではなく、その環境により適するようになっただけです。生物の世界では、最終的に目指すものが単純なので、何を目指して最適化するかもはっきりしています。そうです、どの生物にとっても一番大事なのは、自分を生き延びさせることと繁殖して種を継続させることです。だから、自己存続と繁殖しやすいように適応することが、常に自然界での最適化の定義です。

では、マーケットでは一体何をすることが最適化なのでしょうか?それを理解するには、当事者の主な目的が何なのか知る必要があります。もちろん、人間も生き物ですから、自己存続はいつもリストの一番上に来ます。飢えていたり、寒かったり、病気や怪我をしていれば、それを治すことが何よりも大事になります。でも、基本的なニーズが満たされた後、人を心の底から駆り立てる動機は何なのでしょうか。人々にとって、自己の利を追求するとは、一体どういう事なのでしょう?

殆どの人にとって、これはカルチャー(and/or 価値観)によります。あるカルチャーでは、失敗することへの恐れがものすごく強烈で、栄誉を勝ち得たり財をなすよりも大事になり、無難に人並みで過ごせることを何よりも心から願うのです。また、他のカルチャーでは、心の底から人を駆り立てるのが、宗教による救いであったり、コミュニティーであったり、家族サービスであったり、のんびりしたライフスタイルを追求することであったり、精神的な悟りをひらくことであったりするのです。

しかし、このような動機はテクノロジーの進歩に貢献しません。テクノロジーのイノベーションが、こういった人たちの願いを満たすのにあまり役立たないからです。では、どんなカルチャーでどんな動機が強ければテクノロジーは進歩するのでしょうか?

理想は次の2つのミックスだと思います。

最初の要因: 欲 パーフェストで、フェアで、オープンなマーケットでは、欲が動機の根本であり必要不可欠です。資本主義の理論は、実社会に価値のあるものを作れば作るほど、お金が儲かるというものです。競争市場では、会社はその環境で最適化するために、より良い製品やサービスを作り出す努力をし、その結果、最大の利益を引き出すのです。人は実にいろいろな欲求を持っています - 贅沢なライフスタイル、個人の自由、安全、賞賛、権力、セックス - どれが欲しいかは関係ありません。大事なのは、どうしてもその何かを欲しいという欲求が、手に入れるための行動を最適化させて、それによってテクノロジーが進歩することです。

でも、欲望は、両刃の刀です。欲望が進歩に役に立つには、インテグリティが高く、実力主義のフリーマーケットの中で行わなければなりません。でなければ、欲は反対に進歩の敵になってしまいます。システムがインテグリティを失い、腐敗すれば腐敗するほど、上に立つ者の欲が深ければ、自分の利ができるだけ長く続くように制度を悪用できるからです。

二番目の要因: 並外れた野望 欲望は徐々にテクノロジーを前進させてくれますが、飛躍的な進歩を遂げるには、通常、この二番目の要因が鍵になります。偉大なことを成し遂げたいという、燃えるような野望です。ここでも、どうして野望を持っているのか、その根底を流れる理由は多様で、どれであるかも関係ありません。有名になりたいとか、記録に残る業績を残したいとか、生前生後も偉大だったと思われたいとかの、エゴに突き動かされるれている場合もあります。また、尋常でないほどの自信を持ち、失敗することを恐れず、傲慢で偉ぶっていると思えるほど理想を追っている場合もあります。全く不利な立場にいるのがわかっていても、そんな計算に軽く打ち勝つほどの熱く燃える思いを持つハングリーなアンダードックがこれです。(アンダードックは野良犬または映画などの浪人侍のイメージですか)

成熟した既存の業界では、勝ち組が優位な立場を楽しんでいます。密集した熱帯雨林の最上位層で、枝を広げ太陽の光を葉いっぱい浴びているようなものです。たまに、他の枝が伸びてきそうになったら、ちょっとだけ競り合って、自分の枝も少しだけ上に伸ばせば、また日光を浴びれます。必要なだけの日光を浴びれればいいので、普段は一番上に留まれるようじっとしていれば良いのです。そこから更に上に登る必要などありません。

一方、生い茂った熱帯雨林の下は鬱蒼と暗く、地面の辺りには太陽の光など届きません。でも、そこでは、新種の苗が育とうとしています。見た目はヒョロっとしているけれど、太陽をめいっぱい浴びたいと焦がれに焦がれて、週に100時間以上働きながら力強く根を張り巡らし、どうしたら生い茂った木々を追い越して、上に飛び出せるか必死に考えあぐねています。ブレイクスルーが起こると、苗はグーンと大きく伸び、木々の上に飛び出し、大空のもとで大きく葉を広げます。突然、それまでは最上層で思う存分日光を浴びていた木々が陰に入り、栄養が行き渡らなくなります。。。




http://www.bbc.co.uk/education/guides/z8r6fg8/revision/8?slideshow=2


そうすると、それまで眠っていた本能が目を覚まし、生き残りをかけてイノベーションがハイギアで始まるのです。前の環境では勝ち目のなかった新種のテクノロジーがトップに踊りだして、環境はかき乱されます。変わってしまった環境で最適化するためには、皆、イノベートするしかないのです。中にはトップに返り咲くのもあれば、死んでしまうのもあります。この過程を経て、テクノロジーは一挙に前へ推し進められます。2007年にアップルが携帯電話の熱帯雨林を突き破った時に、他の会社はスマートフォンを作るか、死んでしまうかの選択を強いられ、サムソンは上に戻れ、ノキアは戻れなかったのを私たちは目の当たりにしました。

これを心して、自動車業界と、最初の質問に戻りましょう。

どうして自動車業界のテクノロジーは、これまで100年の間あまり進歩しなかったのでしょうか?


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7.19.2015

エネルギー、車、テスラと変える世界 ---11


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以下は、このリンク先の記事 http://waitbutwhy.com/2015/06/how-tesla-will-change-your-life.html を私が勝手に解釈して書いています。オリジナルの内容にできるだけ沿ったつもりですが翻訳ではありません。


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車ストーリー(その2)


それから一世紀、100年経ちました。その間に、原始的でローカルでしか使えなかった有線電話が、今ではインドのデリーにいる人が、ポケットから小さいガラスの板を取り出して表面を指先でタップするだけで、瞬時にサンパウロにいる友達と顔を見ながら話せるようになりました。雪模様だらけで途切れがちだった白黒のサイレント・ムービーは、Pixar(ピクサー)になり、化学薬品を混ぜていた研究所は、素粒子を衝突させるLarge Hadron Collider(大型ハドロン衝突型加速器)になりました。ライト兄弟の12秒、120フィートの飛行は、地表から250マイル上空の国際宇宙ステーションに定期的に通う飛行になりました。(それどころか、太陽系の端のプルートまで9年半かけて飛ばせた宇宙船から、写真やデータを受け取れるまでなったのです。)

「そして、原始的なガソリンを燃やす車は、」という文を、「想像も出来ないくらいイカしたカッコいい何かになりました。」と締める代わりに、「良質なガソリンを燃やす車になりました。」と言うしかありません。

前も言ったように、1900年頃の人には、ACインダクション・モーターで車を走らせるのは、とってもイカした未来的なアイディアだったはずです。内燃エンジンは、改良が進んでそれなりにカッコよかったものの、そもそも100年前に発明された蒸気機関がもとで特に未来的ではありませんでした。それに。。。今私たちが住んでいるのは1900年ではなく、2015年です。それなのに。。。皆が乗っている現代の車のエンジンを覗くと、シリンダーの中で何か熱いものが爆発して、ピストンが行き来している。。。


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これって、とてつもなく古い、旧式じゃないですか?


                                   

ここで、車について何も知らない人(ティム)が、エンジンはどうやって動くのか説明します。車に詳しい人は憤慨するだろうな。。。

上のアニメーションは、4ストローク、4シリンダーのエンジンです。4シリンダーとは、中をピストンが上下運動している4つのチューブの事です。ピストンが上がるか下がるか、どちらでも一回の運動をストロークと呼びます。4ストロークして1サイクル、その間に燃料は燃焼します

1)インテイク・ストローク: ピストンが下がって、上に青いものが満ちるストロークです。青いのは吸い込まれた空気で、これに燃料インジェクターが、ちょうどのタイミングで僅かばかりのガソリンを吹き込みます。

2)コンプレッション・ストローク: ピストンが上にあがり、その時、青いものがオレンジに変わるストロークです。何が起こってるかというと、ここではインテイク・ストロークの時に空気を取り入れたバルブが閉まるので、ピストンが上がるとき、空気とガソリンが混じったものがシリンダーの外に出れなくて、ギューッと圧縮されます。

3)パワー・ストローク: 車好きの人は、このストロークを熱っぽく語るんじゃないかな。上のアニメーションでは、ピストンが下がり、下がりながら上のオレンジのものがグレーになるストロークです。前のコンプレッション・ストロークで、空気とガソリンはギュッと圧縮されました。そのストロークが頂点に達した時、シリンダーの上にあるスパークプラグが火花を散らし、圧縮された空気とガソリンに火をつけ、小さな爆発が起こります。この爆発でピストンが下に押し下げられます。このストロークで車のエンジンが動かされるのです。

4)排気ストローク: ピストンが上がり、灰色のものを押し上げ外に出すストロークです。灰色のものは排気(ピストンの中でキャンプファイヤー?を燃やして出た煙)で、ここからテールパイプを通って外気に出されます。煙のほとんどは無毒のガス、それに、僅かな一酸化炭素と他の毒(?)が混じっています。また、排気の中には、爆発した時に出来た二酸化炭素も含まれています。これで、3億年もの間、地下で退屈な時を過ごしてきて、ガソリンの中に埋もれていた炭素が、自由になってハッピーに大気に戻るのです。

これらのピストンが激しく往復を繰り返し、クランクシャフト(ピストンの下にあるピストンがつながっている金属のからくり)を動かします。これが回転運動を起こし、最終的に車軸を回すのです(多分そうでしょう)。

詳細: このビデオの最初の2分間が、上のアクションを見せてくれます。こちらは見た目が綺麗なビデオです。

                                                                                

こうやって見ると、車のエンジンは確かにクールですね。熱中する人がいるのもわかります。でも、この2つのアニメーションを並べて見てみると。。。


1815年の蒸気機関エンジン:



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2015年の車のエンジン:


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二百年もたってる割には、あまりにも似すぎている。。。

「シリンダーの中で熱い爆発が起こり、ピストンを往復させ、金属棒を動かして車輪を回す。そして、発生した煙をハイプから吐き出す。」って、なんとも古ぼけたテクノロジーに聞こえるし、今でも使っているのはなんかおかしい気がするんです。

私たちは自分が住んでる世界に、その世界がどんなものであろうと、結構慣れるものです。でも、歴史を調べて、ずーっと遠くから眺めてみると、腑に落ちないことが幾つか見えてきます。これも、そのうちの一つです。

どうしてこうなったのでしょう?

もし、電気モーターがもっと進んで優れたテクノロジーなら。。。静かで、クリーンで、先端技術を利用していて理想と思われていたのなら、どうして、社会はその技術を諦めてしまったのでしょうか?1900年当時は、電気自動車もガソリン車も両方まだ大衆に普及していなかったし、どちらも、克服しなければならない幾つかの大きな技術上の問題を抱えていました。確かに、その後すぐガソリン車の方が先に問題を解決しました。でも、だからといって、どうして延々とガソリン車で我慢しなければならない理由があるのでしょうか?ガソリン車は原始的な技術を使っていて、私たちの都市をスモッグで汚し、大気の化学組成を変えてしまっているのに。

20世紀の人類の発明力は、ライト兄弟の12秒飛行から僅か66年で、月へ人を送れるほどの技術の飛躍をもたらしました。その発明力を使っていれば、バッテリーの技術を改善し、電気自動車の値段を下げ、充電時間を減らし、走行距離を伸ばす事など、まず問題なく出来ていたはずです。「どうして、一般社会にこんなに大事な車の動力テクノロジーの発明や前進が止まってしまったのでしょうか?」

同じ疑問は、化石燃料時代のもう一つの大きい課題にも投げられます。不思議に思いませんか?アメリカ初の発電所、マンハッタンにあるエジソンのパールストリート発電所は、1882年に石炭を燃やして発電を開始しました。どうして、2015年の今になっても、発電の大半はいまだに石炭を燃やして行われているのでしょうか?既に何十年も前から、石炭を燃やすのは最適な方法でもないし、長期間継続もできないっていうことがわかっていたのに。

「Xテクノロジーが進歩しなくなったのはどうしてだろうか?」という質問は、進歩を誤解しているから出てくるのだと思います。「テクノロジーの進歩が止まってしまうのはどうしてか?」と問うかわりに、こう問うべきではないでしょうか?


「テクノロジーが進歩するのはどうしてだろうか?」




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7.18.2015

エネルギー、車、テスラと変える世界 ---10



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以下は、このリンク先の記事 http://waitbutwhy.com/2015/06/how-tesla-will-change-your-life.html を私が勝手に解釈して書いています。オリジナルの内容にできるだけ沿ったつもりですが翻訳ではありません。


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パート2: 車ストーリー(その1)


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世界初の車のオーナーを紹介しましょう。

ドライビングスーツ(?)に身をまとった中国のKangxi皇帝(康熙帝)がその人です。1672年、彼が18歳の時、世界初の車の発明者から献上を受けました。



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発明したのはFerdinand Verbiest(フェルディナンド・フェルビースト)。フランダース出身のイエズス会伝道師でした。フェルビーストは人生の大半(?)を中国で過ごし、1670年には、誰がより正確なカレンダーを作れるかというコンテストでライバルに打ち勝ち、皇帝の主席数学者および主席天文学者となりました。(負けたライバルは、生きたままでギザギザにされてしまいます!?!)彼は、この職についてからいろいろなものを発明しました。車はそのうちの一つで、皇帝のおもちゃとしてつくったものです。とても洒落たものでした。


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ドライバーが乗れるほど大きくはなかったものの、火で作った蒸気を車輪に当て、回転させ、ギアを回して後輪を動かす方法を思いついて、世界で初めて(知られている範囲では)自動で動く車を作り出しました。


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1769年には、フランスの発明家Nicolas-Joseph Cugnot(ニコラ・ジョセフ・キュニョー)が、ドライバーが乗れる車を発明。




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次に登場したのはこちら。フランソワ・アイザック・デ・リヴァは、1807年に、世界で初めて内燃エンジンで動く車を発明しました。



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蒸気エンジンは、エンジンの外で火を燃やし、中の蒸気を熱してエンジンを動かします。燃焼は外ですから、外燃エンジンです。内燃エンジンは、蒸気は使わないでエンジンの中で燃料を燃やし稼働させます。



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1886年には、ひげの立派なドイツのエンジニア、Karl Benz(カール・ベンツ)が妻のBertha Benz(バーシャ・ベンツ)と協力して、初めて実用的な車を発明しました。



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これが、世界初の本物の使える自動車、Benz Patent-Motorwagen(ベンツ・モーターワゴン)です。車輪が3つあり、現代も使われている内燃エンジンのもっとも原始的なもので動きました。値段はUS$1,000(今のお金だとUS$26,248)でした。

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それから数年後、海を超えたアメリカのミシガン州で、ヘンリー・フォードという名前の農家の少年が、お父さんの後を継いで農業をするなんて退屈すぎると(?)、トーマス・エジソンの会社に出向き、そこで働き始めました。当時、エジソンの会社は、アメリカの各都市に発電システムを設置するのに忙しく、フォードはそれに携わっている間に、発電に使われる蒸気エンジンに詳しくなりました。仕事の合間に、家の隣の小さなワークショップで、まだ当時は珍しかった内燃エンジンをいじったり試したりしていました。そうこうしているうちに、1896年32歳の時に、簡単な内燃エンジンで動くFord Quadricycle(フォード四輪車)を作り出したのです。



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自動車作りにどんどん没頭していったフォードは、1899年に仕事をやめ、Detroit Automobile Company(デトロイト自動車会社)をつくります。これがだめになると、1901にHenry Ford company(ヘンリー・フォード・カンパニー)をつくりました。

しかし、投資家とのいざこざですぐ会社を離れ、残った会社はCadillac Automobile Company(キャデラック自動車会社)と名前を変えました。フォードは1903年に、Alexander Malcomson(アレクサンダー・マルコムソン)とパートナーになり、Ford & Malcomson, Ltd.(フォード&マルコムソン社)をつくります。その後これをFord Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)と変名しました。マルコムソンには面白くなかったでしょうね。

フォードと彼の会社は、ガソリン車作りに突き進みます。しかし、当時はガソリン車は一般的ではなかったのです。車自体が新しいテクノロジーだったし、20世紀初頭のアメリカ市場では、蒸気で動く車が40%、電気で動く車は38%で、ガソリンで動く車は22%に過ぎませんでした。

この割合は当時の状況を調べればうなずけます。蒸気を使った外燃エンジンは、古くから使われよく理解されていたので、車を動かすのにも最も頻繁に使われました。内燃エンジンは、これの洗練された新しい従兄弟のようなもので、代わりにガソリンを中で燃やして車を動かしました。ミドルマンだった蒸気をなくしたので、燃料をもっと効率的に使えるようになったのです。しかし、時は1900年前後、最も期待されていた新星は電気自動車(EV)でした。当時は、新しくてカッコいいテクノロジーのほとんどが、電気を使ったものだったのです。

1860年半ばから世紀が変わるまでの35年間は、電気革命の真っ只中でした。トーマス・エジソン、ニコラ・テスラ、アレクサンダー・グラハム・ベル、ジョージ・ウェステングハウスなどの発明家達に率いれられて、普通だった世の中が、マジカルな世界へと変貌していきました。最初の魔法は、19世紀半ば過ぎに起こります。長距離電気を利用した電信技術で、遠く離れた人と交信できるようになったのです。そして、1866年には大西洋をまたいだ通信に成功し、ヨーロッパとアメリカの間で瞬時に交信できるようになりました。1870年の後半には、魔法の革命は本格的になります。1876年には最初の電話通信が成功し、翌年1877年には、初めて人の声を記録して再生することに成功しました。1880年代初めには電気の街灯がつきはじめ、1896年には最初の電気グリッドが張られて、人々の家に電気が来るようになったのです。同じ年、初期の映画が初めてニューヨークで上演されます。1900年には、ブラジルで初めて人の声が無線で流れました(ラジオの誕生)。一方、街には魔法の馬なしの車が現れるようになり、数年後1903年には、ライト兄弟が、歴史上初めて空気よりも重いものを飛ばすことに成功しました。なんてめちゃめちゃクールな時代だったことでしょう。

今の私たちにとって、モダンテクノロジー = コンピューター、スマートフォン、インターネットのように、1900年頃の人には、モダンなテクノロジー = 電気だったはずです。当時のエジソンとテスラは、今のビル・ゲイツとスティーブ・ジョブズでした。交通機関を炎のエンジンで動かすなんて、それから100年も昔の機関車と同じアイディアで、1900年当時の人にとって、私たちが白黒のサイレントムービーを思うくらいモダンな(No!)テクノロジーでした。当時は既にエネルギーを作り出す現場を知らなくてもいい時代、火を燃やすことなど、どこか遠くの発電所でやってくれているはずで、一般の人は、静かできれいで便利なマジカルバトラー(電気)を使うだけでよかったはずなのです。

1900年当時生きていた人に、蒸気で外燃、ガソリンで内燃、電気の3つの内のどれが将来車を動かすパワーの戦いに勝ち残り、基準になると思うかと尋ねたら、多分ほとんどの人は電気と答えたと思います。既に、ガソリン車よりもずっと多数の電気自動車が街を走っていましたし、エジソンやテスラをはじめ、著名で影響力のある発明家たちが電気自動車の未来づくりに力を注ぎこんでいました。20世紀初めのニューヨーク・タイムズは、電気自動車はガソリン車より静かでクリーンでより経済的で理想的だと呼びました。

しかし、始まったばかりの自動車業界を左右したのは、理想的かどうかではなくて、スケーラブル(早く普及させられる)かどうかっだのです。車はその頃までは、あまり実用的でないお金持ちのおもちゃに過ぎませんでした。いずれ普及させられたら、そのうちに全てを理想的なものに変える時が来るだろうけれど、とにかく、いかに早く走って、丈夫で、手軽な値段の車を作ることがまず最初のステップでした。世界中のお金と優秀な人材が車のテクノロジーに注ぎ込まれて、1908年には、フォードとその設立5年の会社が、自動車業界を急成長させ一般に普及させるきっかけとなった車を市場にデビューさせました。モデルTです。

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モデルTが出るまでは、電気自動車もガソリン車も両方大きな問題を抱えていました。電気自動車は、走行距離が短く、燃料補給に時間がかかりました。ガソリン車は、うるさく、スタートさせるのが大変で、百年前と同じように黒い煙を撒き散らしました。

しかし、稀にみない優れた実業家だったフォードは、従来の手作業から、流れ作業の組立ラインで車を作ることを思いつき、値段を大幅に引き下げて、アメリカ初の大衆車を作り出したのです。1912年には、エンジニアのCharles Kettering(チャールズ・ケターリング)が電気スターターを発明し、骨折りで危険だったガソリン車のスタートが簡単になりました。また、新たにマフラーも発明され、騒音を大幅に減らすことが出来ました。こうして突然、それまでのガソリン車特有のいやな問題の数々が解決されていったのです。そして、電気自動車よりもずっと安くなりました。フォードのモデルTはアメリカ市場を独占し、1914年には、アメリカの新車の99%はガソリン車となり、1920年には、電気自動車はアメリカの商業生産から全く消え去ってしまいました。

でも、こうならなければならない理由などなかったのです。車の将来はどうにでもなる状況だったのに、燃料を燃やすのは昔の技術で、電気がこれから先の技術だったのに、フォードが実現可能で利益が出せる自動車作りのビジネスモデルを作って他の競争相手を出し抜いただけなのです。一方、電気自動車業界にはフォードに対抗できるビジネスモデルを作り出した人は出ず、あっという間に、流れを変えるのがどんどん難しくなってしまい、皆、諦めてしまいました。

7.17.2015

エネルギー、車、テスラと変える世界 ---9


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以下は、このリンク先の記事 http://waitbutwhy.com/2015/06/how-tesla-will-change-your-life.html を私が勝手に解釈して書いています。オリジナルの内容にできるだけ沿ったつもりですが翻訳ではありません。


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エネルギーストーリー(その8)


では、2013年度のアメリカのエネルギーフローを見てみましょう。単位は変わって、quad(クワッド)です。

1クワッド = 1000兆 BTU = 1000ペタジュール



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2点、特に目立つ点は、

ー アメリカは、天然ガスの巨大消費モンスター、それも飛び抜けて世界一。

ー それ以上に、アメリカは石油の巨大消費モンスター。それも飛び抜けて世界一で、なんと、二番目の中国の二倍、三番目の日本の四倍の消費量。

アメリカがどれほど石油を使っているか、比較しやすいように、各州と同じくらい消費している国を見つけて地図をつくってみました。






さて、どのエネルギーを何にどれほど使っているか大まかにわかった所で、本題に戻りましょう。タイムラインの黒い部分(化石燃料の時代)から這い出して、黄色の時代に移るにはどうしたらいいのか?先のLLNLは、アメリカの炭素排出量とその出処を示したチャートも出しています(下図)。アメリカは、世界第二の炭素排出国で(中国はアメリカの50%多く、排出量世界一)、中でも輸送セクターの排出量は世界一です。まず、アメリカが何をどうすればいいのか、私たちがきちんと把握するのが解決につながるスタートだと思います。

黒から黄色へ移るには、炭素の排出をなくすことです。アメリカの炭素排出フローチャートをみると、2つの数字が目を引きます。


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黄色い時代に移るには、もっといろんな事をしないといけないのはわかっています。でもまず、この2点(アメリカの二酸化炭素排出の72%を占める)が、最も影響も効果も大きく、最も早急に取り組むべき問題に思えます。

1)発電は、世界全体のエネルギーフローの40%を占めます。その3分の2は、石炭を中心とした二酸化炭素を排出する化石燃料を燃やして賄われています。つまり、発電は莫大でかなり汚いのです。

2)輸送セクターは、世界のエネルギーフローの大きな部分を占め、特に先進国ではその3分の1にもなります。この輸送セクターの殆どは石油で動かされています。つまり、輸送セクターは莫大で、全くほとんど汚いのです。

これまでずっとズームアウトして来ましたが、今度はズームインする番です。これから先、二番目の問題、輸送セクター、特に車について詳しくみていきたいと思います。輸送セクターは、飛行機、汽車、船、トラック、車等を含みます。中でも、車の排気量は、他の全てを合わせた量を上回るだけでなく、このままでいくと、2030年には今の50%も増えると予測されています。車の排気は、黄色の時代に進む為の大きな課題。ズームインして、どうしてこんな問題になったのか、どうして今もまだ問題なのか、解決するにはどんな道があるのかを調べてみましょう。。。


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7.16.2015

エネルギー、車、テスラと変える世界 ---8

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エネルギーストーリー(その7)


その質問の答えを出すのに、Lawrence Livermore National Laboratory (LLNL) ローレンス・リバモア国立研究所が発行しているエネルギー・チャートの手を借りましょう。アメリカのデータは毎年更新されていて、その最新版を後で見ますが、その前に、2011年に出されたレポートを見てみましょう。このレポートには、2007年度の世界全体のエネルギー・フローチャートと、世界各国それぞれのフローチャートがあります。一見、ゴチャゴチャとややこしそうですが、実はとてもシンプル。各種エネルギー源がどれだけ(左側)、それぞれどのセクターに使われているか示してくれます。


下が、2007年度の世界全体のエネルギーフローです。


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単位PJはペタジュールです。1PJ=1000兆ジュール。

思ったこと:

ー 世界全体を見た時、一番顕著なのは、輸送セクターをほとんどが、石油(原油など)で賄われていることです。世界の交通輸送機関の94%は石油で動かされていて、特に先進国ではこの割合が上がります。

ー バイオマス(木、とうもろこしなど食べ物を蒸留した油、肥料など)もかなりの量使われていて、そのほとんどはアフリカを中心とした発展途上国です。

ー 右側をみると、かなりの量の廃棄エネルギー(グレー)があるのがわかります。廃棄エネルギーとは、効率が悪いため、熱などの形となって失われてしまうエネルギーのことです。特に目立ってパフォーマンスが悪いのは輸送セクターで、実際、燃やす燃料の四分の一しか役に立っていません。


次にフランスを見てみましょう。


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思ったこと:

ー 原子力がかなりの量を占めて、石炭は僅か。だから、二酸化炭素排出量は少ない。

ー 輸送セクターは、他の国と同じように石油に頼っています。

ー この記事では取り上げませんが、「化石燃料はジオポリティカルの不安要因になる」という問題も抱えています。フランスはその影響をもろに受ける国のうちの一つです。各国間の相互依存は、生産的だし大事なことです。でも、国が機能し続けられるかどうかを他の国に完全に頼るのはいいことではありません。化石燃料に頼り、輸入せざる負えない状況になって、現代は超依存関係があちこちで問題を引き起こす社会となりました。フランスの輸送セクターは完全に石油に依存し、その石油を完全に他国に頼っています。この状況がフランスの立場を弱くしています。アメリカは今そこまで依存していません。10年前は石油の60%を他国に頼っていましたが、その後、世界の三大石油生産国の一つになりました。EIA(US Energy Information Administration) は、2015年度のアメリカ石油消費の輸入への依存度は21%に留まると予測しています。また、輸入先の内訳を見ると、中近東からの石油輸入は意外と少ないく、サウジアラビアから12.5%、ペルシャ湾岸国全体でも20%。大半は西半球からで、最大の輸入先のカナダは37%、メキシコ、ベネズエラはそれぞれ9%です。


次は中国です。

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中国はエネルギー・モンスターです。何と言っても、産業モンスターですから。毎年、世界中の石炭燃焼量の半分を燃やしている石炭の怪物です。石炭消費量57,000 PJと言うのは、なんとフランスの全エネルギーフロー量の5倍。。。桁外れです。


次はサウジアラビアです。

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芸は一つだけって感じですね。莫大な量の石油を生産して、そのほとんどを輸出しています。


北朝鮮のエネルギーフローは、予想通りやっぱりなんか変です。


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他の国を含め、全世界のレポートはここにあります。もちろん、日本のレポートもありますので見てみてください。ただし、2007年度のデータだということをお忘れなく。レポートを出しているLLNLはアメリカの国立研究所で、この記事のオリジナルはNYに住むアメリカ人が書いています。次は、アメリカのデータと問題点を見てみましょう。

7.15.2015

エネルギー、車、テスラと変える世界 ---7

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以下は、このリンク先の記事 http://waitbutwhy.com/2015/06/how-tesla-will-change-your-life.html を私が勝手に解釈して書いています。オリジナルの内容にできるだけ沿ったつもりですが翻訳ではありません。


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エネルギーストーリー(その6)


課題2: 化石燃料には限りがある


これまでに何度か、高密度エネルギーの化石燃料が地下洞窟に限りなく満ち満ちていると表現しました。19世紀の頃はまさにそう思えたでしょうし、今でも、まだどれだけ地下に眠っているか考えるとそうも思えるのは理解できます。でも、地球の化石燃料は無限ではありません。限りがあるのです。

いつ底をつくかと言うのは、複雑でわかりにくい問題です。が、このようなサイトが出しているこのようなレポートにあるチャートを見ると、このままで行くと底をつくのはあまり先のことではなさそうです。


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更に、こういったサイトCIA World Factbookを引用して、石油と天然ガスが底をつき始めると、石炭の需要が急増するので、実はもっと先は短いんだと指摘してくれます。




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一方、他のサイトの中には、こういった予想は、現在確認されている埋蔵量だけをもとにしていて、これから発見開発されるであろう他の化石燃料を考慮していないと反論しているのもあります。ターサンドに含まれる石油や海底の下にある豊富なメタンハイドレート、更に、フラッキング水平掘削などの新しい採掘技術を引き合いに出して、今後数百年はなくならないとほのめかします。でもこの種の意見は、もしすぐになくならなくても、採掘するのがますます困難になり、それにつれて費用もどんどんかさんで来るという問題を無視していると、反対に反論を受けています。

でも、なくなるのがすぐなのか後になるのかということより、もっと大事な問題があります。もし、このまま化石燃料に頼ったままでいたら、いつか化石燃料が底をつき始め、価格が急上昇し続ける時が来ます。そして、皆、再生エネルギー技術の開発に狂ったように手を付けるでしょうが、その時点では世界経済の大崩壊を食い止めるのにはもう遅すぎる。。。早かれ遅かれ底をついた時、経済が壊滅的な大打撃を受けたらどうなるのでしょうか。

今私たちは、地下で見つけた誰かの遺産を食いつぶしながら生活しているのです。遺産がなくなってしまう前に、仕事を見つけて自分で食べていけるようにならなければ。。。

さて、ここまでをまとめてみましょう。

「将来、すぐかも知れないし、もうしばらく後かもしれないけれど、化石燃料はなくなってしまうか、高くなりすぎるので、なんでも化石燃料に頼れなくなる時が来る。」

私たちが今生きている時代は、人類の歴史上、化石燃料時代と呼ばれるようになることをこのステートメントが明示してくれます。






最初のステートメント、「もし、今と同じように、このまま化石燃料を燃やし続ければ、割と近い将来、取り返しのつかないとんでもない事になるだろう。」を思い出してください。今、時間を無駄にして、黒い時代にいつまでもズルズルと居続けようとすると、間際に大慌てするばかりでなく、黄色い時代を永久に悪化させてしまうリスクがあるのです。

だから、イーロン・マスクは、化石燃料時代をどこまでも延長させようとすることを、「歴史上最もバカな実験」と呼ぶのです。この点を強調して彼は言いました。「炭素の排出量が増えて、自然な海水や大気の化学組成そのものが変われば変わるほど、長期的な影響が大きくなる。化石燃料はいずれはなくなってしまうのだから、どうしてこのキチガイじみた実験を続けて、どこまでひどくなるか試そうとするんだろう。ある程度悪いってことは明白だし、科学的には非常に悪いことだと圧倒的に合意されているのに。」

上のタイムラインに照らして言い換えれば、「黒い時代に長くい過ぎると、長期的に膨大なダウンサイド・リスクがあるから、できるだけ早く黄色い時代に移そう。」ということです。

懐疑論者の中には、納得できる議論を唱える人もいますが、まだ疑っている人たちでさえ、その殆どは、化石燃料を燃やすと温暖化に繋がり、温暖化は悪影響をもたらし得ることは認めています。「化石燃料を燃やすことは ⇒ それほど危険ではなかった。vs とんでもなく壊滅的だった。」この2つのどちらを選ぶか?安全な方を選んだほうが良いと思いませんか?

では、どうやって黒から黄色の時代へ移ったらいいのでしょう。

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7.12.2015

エネルギー、車、テスラと変える世界 ---6

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以下は、このリンク先の記事 http://waitbutwhy.com/2015/06/how-tesla-will-change-your-life.html を私が勝手に解釈して書いています。オリジナルの内容にできるだけ沿ったつもりですが翻訳ではありません。


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エネルギーストーリー(その5)


事実2)大気中の二酸化炭素量の増減に伴って、気温も上下する。

掘り出した氷床コアから、科学者は今までの二酸化炭素の量の変化ばかりでなく、気温の変化も調べることが出来ます。下はその結果をグラフにしたものです。(上の青線が気温、下の緑線は二酸化炭素量)



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関連は明らか。。。そしてその理由はいたってシンプル。というのも、二酸化炭素はグリーンハウスガスだから。野菜など作るグリーンハウスを覆うガラスやビニールは、一旦通した太陽エネルギーの大半を外に出さずに閉じ込めてしまうので、中を暖かく保てるのです。大気中にある化学物資の幾つか(グリーンハウスガス)も同じ働きをします。大気を通って入ってきた太陽エネルギーが、地表や海面を反射して大気の外に出る前に、グリーンハウスガスに弾き返され、大気中をあちこち動きながら広まるので気温が上がります。

火星の平均気温は−55ºC (−67ºF)。とても快適とはいい難いですが、人が生活するのに何とかなる範囲です。火星の大気は地球より薄いので、太陽エネルギーは反射された後簡単に逃げ出すことが出来ます。それに比べて、なんと金星の平均気温は462ºC (864ºF)。まさに地獄です。どうして金星はこんなに熱いのか?理由は二酸化炭素です。金星の大気は厚く、二酸化炭素が地球の三百倍も含まれているので、熱が閉じ込められてしまうのです。水星は金星よりも太陽に近いので、平均気温はもっと高いだろうと思うかもしれませんが、反対です。水星には大気がないので、日中は金星と同じくらいまで温度が上がりますが、夜になると凍りつくほどまで冷えます。一方、金星は夜になっても日中と変わらず気温は下がりません。熱が大気にこもってしまっているのです。

地球も同じように、大気中の二酸化炭素が増えると気温が上がるのです。では、どれほど上がるのでしょうか?産業革命以前に比べると、地球の平均気温は既に1ºC弱上がっています。もちろん今でも二酸化炭素の量は上がり続けているので、ほとんどの科学者たちは今後も温度も上がり続けると見ています。国連が後援しているIntergovernmental Panel on Climate Change (IPCC)は、世界中の専門科学者1300人で構成される気候変動に関する政府間パネルです。ここが出したレポートに、複数の独立した研究所がそれぞれ今後どう気温が変動するか予測したデータがあります。二酸化炭素を今のままの状況で出し続けたとしたら、気温はこう上昇するというのです。



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ほんの少数ですが、中にはこれらの予測は大げさすぎるという声もあります。大気中の二酸化炭素が増えて気温が上がると、海面や地表からの水の蒸発が促されて、大気中の水蒸気が増えます。実は水蒸気もグリーンハウスガスの一つなので、これが気温の上昇を促し、そして、また蒸発を促して水蒸気を増やし、このサイクルが延々と続くことになります。大気中の水蒸気が二酸化炭素排出量の影響を倍増させるというフィードバックループです。大げさだという人たちは、このフィードバックループがなければ、二酸化炭素増加による気温の上昇は半分か3分の1だと言うのです。でも、そう言う人も、二酸化炭素が増えると気温が上がるという基本点は認めています。

では、どれだけ気温が上がると、どんな影響があるのでしょうか?


事実3)少し気温が上がっただけで、とんでもないことになる!

18,000年前、地球は20世紀の平均気温より5ºC低かったことがわかっています。その頃、カナダやスカンジナビアはすべて、イギリスやアメリカの大半も、800メートルの厚さの氷に覆われていました。5ºCの差はそれほどの威力を持つのです。



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一億年前は、今よりも6ºC〜10ºC高かった時代です。当時は、南極や北極にも椰子の木が茂り(?)、氷河などどこにもありませんでした。海水面は今より200メートルも高く、こんな輩が徘徊していました。



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ということは。。。今の気温からあまり外れないで、限られた狭い範囲内に収まっていた方がいいってこと。



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でもそんなもんじゃなくて、実はもっと危うい状況なんです。まず、平均気温が壊滅的に上がらなくても、壊滅的な大惨事は起こりえます。例えば、平均気温が3ºC上がるのに、日々の最高気温がもっともっと高くなることは当然ありえます。もし、ほんの一日でも、58ºC(138ºF)になったとしたら、今ある作物や動物の殆どは死んでしまうでしょう。。。

それに、惑星の最低温度は絶対零度−273ºC (−459ºF)なので、そこまで下がり得ることを考慮すると、5度の差(地球の北半分の大半が分厚い氷で覆われていた時代と今の気温差)は、10%ほどの違いに思えますが、実はわずか1.5%にしか過ぎないのです。温度範囲全体からみると、私たちが慣れ親しんでいる気温は、本当にデリケートなバランスを取りながら保たれている、狭い範囲内にあることがわかるでしょうか。



先にも言ったように、平均気温は産業革命前に比べて1ºC近くまで、上がりつつあります。(IPCCは現在の上昇値は0.86ºCとしています。)科学者たちは、何度上がったら取り返しの付かない惨事が始まるのか議論をしてきました。過去20年間、100カ国以上の国が、温暖化の上昇を2ºCで抑えようと合意してきました。でも、これに関して、もう実に様々な意見が飛び交っています。

私が調べたところでも、この2ºCの上限に関して、高すぎる=もっと上がってもなんとかやっていけるという意見も、反対に、低すぎる=2ºCになったらどんな大惨事になるのか甘く見ているという意見まで様々、信頼度の高い情報源が出しているのをみました。また、2ºC以下に抑えられるのかどうかについても、様々な意見を目にしました。妥当な制限をすれば可能だという意見から、いまから2ºCに抑えるのは無理という意見まであります。もうすでに、上昇する動きが始まっていて、これから数年後に二酸化炭素を出すのを完全にやめたとしても、地球はこのまま2ºCを超えて暖まり続けるというのです。

では、一体全体、どうすれば良いというのでしょうか?

今、一番大事なことは、こういった相反する意見や情報に飲み込まれてしまわないで、根本的な事実を把握することです。本当のことを言うと、誰も確実にこうなるとわかってる人などいないのですから。。。海面レベルとか、公害とか、嵐とか、氷河が溶けてかわいそうな白くまのビデオとか、細かいことはここでは議論しません。そんなことは置いておいて、まず、今、確かにわかっている3つの事実を並べてみましょう。





この3つを、シンプルにすると、残る事実は。。。


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化石燃料を燃やすと、とんでもないことになる。


なるほど、おもしろい。。。でもまだ疑ってる人もいるでしょうから、彼らをシャットアウトしないように、議論の余地を残すために文をマッサージしてあげましょう。


「もし、今と同じように、このまま化石燃料を燃やし続ければ、割と近い将来、取り返しのつかないとんでもない事になりそう。」


さて、これを心して、化石燃料のもう一つの大きな課題にうつりましょう。


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7.11.2015

エネルギー、車、テスラと変える世界 ---5

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エネルギーストーリー(その4)


課題1: 地球は温暖化してる


政治家、教授、社長、ビジネスリーダー、フィルムメーカーなど皆さん無視して、3つの事実をみてみましょう。

事実1)化石燃料を燃やすと、大気中の二酸化炭素量が増える。

データをすぐ出しますが、その前に、化石燃料を燃やすとどうして二酸化炭素が出るのか分かりますか?

答えはシンプル。燃焼光合成だから。

植物は育つ時に、光合成をして自分で食べ物を作ります。簡単にいうと、植物は空気中の二酸化炭素を体内に取り入れて、吸収した太陽光線を使い、炭素と酸素に分解するのです。そして、炭素は体内に残し、酸素は廃棄物として外に出します。こうして、太陽の光エネルギーを、体内で使える化学エネルギーに変えるのです。

だから、木は、突き詰めれば、化学エネルギーを貯えた炭素の固まりです。

通常、空中の酸素分子は木の炭素分子を跳ね返すので何も起こりません。(だから、木はいつも燃え盛っていないのです。)でも、酸素分子の動きが激しくなり、木の炭素分子に激突すると、酸素と炭素が融合して二酸化炭素になります。
融合する時に放射される化学エネルギーが、まわりの酸素分子を刺激する ⇒ 
動きの激しくなった酸素分子が、近くの炭素分子と衝突して融合する ⇒
更に化学エネルギーが放射して周りの酸素分子を刺激する
これが連鎖作用を引き起こして、木に火がつきます。だから、木を燃やすことは、木の中の炭素と空中の酸素が融合して、二酸化炭素を作り出すプロセスなのですね。つまり、光合成を逆戻りさせているのです。

もちろん、木(薪)を燃やしている人にはそんなこと関係ありません。関係あるのは二酸化炭素ができる時に放出されるエネルギーだけです。木が貯えてきた化学エネルギーが放出される時にできる炎がもたらしてくれる熱と光が手に入ればいいのです。

木は長い間静かに根気強く炭素分子と太陽のジュールを吸収し続けてきました。燃える時には、その蓄えた炭素と太陽に光を一挙に放出するのです。

言い換えれば、光合成は大気中の炭素と太陽光を誘拐するようなものですね。長い間人質としてかくまっていたものを、燃やすことによって釈放するのです。炭素は勢い良く飛び出してもとの二酸化炭素に戻り、太陽の光は火となります。つまり、火は太陽の光がギュッと詰まったミニチュア版です。

でも、木を燃やして貯めてあった炭素を放出しても、大気中の二酸化炭素レベルには影響しません。なぜか?それは、放出される炭素はごく最近まで大気中にあったからです。それに、もし燃やされなかったら、木は多分そのまま腐食して地面に戻ります。その際に同じように炭素を空中に戻すのでどちらでも同じことです。長いとは言っても、木の炭素が人質に取られていたのは地球の歴史から見るとほんの短い間、燃やして釈放されても影響はありません。

炭素は、大気中から植物や動物へ、そこから地面や水へ、そしてそれらから開放されてまた大気中へと流れ続けます。炭素循環ですね。このサイクル全体を見た時、中を循環している全炭素量はほぼ一定です。木を燃やしても炭素はサイクルの次に移って回っているだけで量が増減するわけではないのです。

でも、時折、循環している炭素が僅かずつに長期間サイクルからハズレ落ちることがあります。植物や動物が死んだ後、何らかの理由で普通に腐食しなかった場合などです。腐食して炭素をサイクルに戻さずに、地中に埋もれてしまうのです。長い間これが続くと、地中に埋もれてサイクルから失われた炭素の量もだんだん増えてきます。今となっては、化石燃料内に含まれて、失われた炭素の量は莫大になりました。大昔に永久的に人質に取られたので、今のサイクルはその炭素が戻って来ないことを前提に回っているのです。

人類がこの人質に取られた炭素を地下で見つけた時には、炭素がポイントではなかったことを思い出してください。彼らの目には、圧縮された三億年前の太陽エネルギーがギッシリ詰まった宝が果てしなく広がっているとしか写らなかったのです。膨大な量の古代植物のジュールがそのまま残っていたのです。石炭紀の植物の遺産を保護する法律はどこにもなかったので、欲しいがままに搾取することが出来ました。歴史上最大のジュール盗難ですね。

欲しいまま掘っては燃やし、ジュールを取り出して使っている間、前カンブリア紀の頃からサイクルから外されていた炭素を、また取り出している事は気にもしていませんでした。機関車を動かし、車にパワーを与え、建物を暖めることに一生懸命だったのです。ジュールは私たちの生活に大きく貢献し、逆らい難い魅力でした。

今、私たちが水準の高い快適な生活を楽しめるのはジュールのおかげです。しかし、その為に吐き出された炭素分子の影響も膨大です。

科学者のチャールズ・キーリングは、1958年から、ハワイのマウナロア天文台で大気中の二酸化炭素量を観測し始めました。今でも、その観測は続いています。下のグラフがその観測記録です。

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ラインがジグザグしているのは、夏の間植物が二酸化炭素を吸収するので値が下がり、反対に、冬は植物が枯れて二酸化炭素を放出するからです。それを除くと全体的な傾向はは一目瞭然です。

別のデータを出しましょうか?過去40万年間の大気中の二酸化炭素量は、アイスドリルの技術を使って正確に調べる事が出来ます。その結果が下のグラフです。




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大気中の二酸化炭素量は、過去40万年の間、180から300パーツパーミリオン(PPM)の間を上下しましたが、300を超えたことはありませんでした。それなのに、ここ過去100年間で400にまで達しています(現在は403PPM)。

大気中の炭素が、いままで通常だった0.02%から0.03%のレベルを超えて、最近は0.04%を超える勢いだし、このままでは0.05%を超える可能性だってあります。でも、急いで結論を出すのは控えましょう。今わかっているのは、事実1)二酸化炭素のレベルが急上昇していることだけですから。


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7.09.2015

エネルギー、車、テスラと変える世界 ---4

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エネルギーストーリー(その3)

今も主役の化石燃料


時は飛んで今、2015年。

ジュールの詰まった地下資源を燃やして、そのパワーを利用できるようになってから二百年以上経ちました。そして。。。今だ変わらず地下資源に頼っています。


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それが犬の性分。美味しいものを見つけたら、食べ尽くしてしまうか、体を壊してしまうまで、延々と食べ続けるのです。他のことには目もくれずに。現代のエネルギー討論は、突き詰めると、このまま犬に洞窟の焼肉を食べ放題させておいて良いのかどうか?ということです。放おっておくと犬は重病になってしまうし、焼肉も残り少なくなってきました。洞窟を見つけてから食べ続けたので、犬は巨大化してしまっています。洞窟の焼肉がなくなると、その膨大な食欲をどうやって満足させられるのでしょうか?たいへんな問題です。

この問題に関して、いろんな人が、いろんな理由からいろんな意見を持って、いろんな所でいろんな事を言っているのを、あなたも聞いているでしょう。もう、うんざりするほどですね。確かに、中には的を得たことを言っている人たちもいます。でも、ちゃんとわかってもいないのに、わかった気になって話してる人がほとんどです。加えて、自分の利益や立場を守るために、不正な情報をいかにも事実のように話す人たちも多いのです。だから、ただでさえ複雑不透明で、いろんなレイヤーがあって理解しにくい問題が、ますますわかりにくくなってしまっています。

この見通しの悪いスモッグをクリアにして、一体全体なにが起こってるのか理解したいと思いませんか?

では、まず、わかってることを並べることから始めましょう。

はじめに、化石燃料って何なのでしょう?そして、どこから来ているのでしょうか?

化石燃料は、大昔生きていた生物の遺骸からできています。ここで言う大昔とは、とてつもなく長い間です。最初に化石燃料となった生物は、まだ地表には動物どころか植物もいなかった前カンブリア紀に、海中に生息していた藻と言われています。(恐竜=化石燃料と思っている人が多いようですが、恐竜が生きていたのは約2億年前、割と最近で、ガソリンに含まれる恐竜の割合など僅かなものです。)ほとんどの化石燃料は、石炭紀に生きていた植物、動物、藻からなっています。石炭紀は3億年前まで約5千万年の間続きました。その間、地表は浅く広大な沼地に覆われていたのです。沼地は化石燃料作りの要です。生物は普通の場所で死んで腐食してしまったら、化石燃料にはならないのです。石炭紀の生物たち(植物、動物、藻)は、沼地で死んで底に沈み、砂や粘土に覆われて、ジュールを保持した状態で更に地下に沈んでいきました。

これらの生物の残骸が、数億年の間、超高温高圧で圧縮されて、ジュール密度の高い固体、液体、気体---石炭、石油、天然ガスになっていったのです。

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化石燃料の種類

石炭:黒い堆積岩で、地中の石炭床と呼ばれる層にあります。3種の中で最も安く、最も豊富。現在は主に発電に使われています。同じ熱量を発生させる場合、二酸化炭素排出量は、石油に比べて三割多く、天然ガスに比べると倍量です。石炭埋蔵量の世界一は、総埋蔵量の22%を占めるアメリカです。一方、石炭燃焼国の世界一は、現在世界の半分以上を燃やしている中国です。

石油:原油、ペトロとも呼ばれ、地中深い貯留層にあります。地下から吸い上げられ、精油施設に送られます。そこで沸騰点の違いを利用して分けられ、多くの製品に作り変えられていきます。その内訳は、2014年度のアメリカでは以下の通りです。

44.9% 車のガソリン
29.8% 暖房用オイルやディーゼル
13.9% ワックス、科学ゴム、プラスティックなど
 9.5% ジェット燃料(ケロシン)
 2.0% アスファルト

石油消費国の世界一はアメリカです。総消費量の20%を占め、二番目の消費国の2倍もの量を使っています。また、アメリカは、サウジアラビア、ロシア(ほぼ同量を生産)と並んで世界の三大石油生産国でもあります。

天然ガス:天然ガスは、石油が超高温になり気化してできます。石油の貯留層付近の地下洞に溜まっています。化石燃料三種の中では最もクリーンで、キッチンのガスコンロ、暖房(電気や石油を暖房に使ってない場合)に使われます。

水圧破砕(フラッキング)の技術が開発され、それまでは手の届かなかった層にあるガスも採集できるようになりました。アメリカではこの技術を使って天然ガスの生産量が急増し、現在では発電の主要燃料源にもなっています(アメリカの発電の20%は天然ガス)。また、世界でもエネルギーの四分の一を占めるようになりました。フラッキングは、膨大な量の水と、砂、多数の化学薬品を混ぜた液体を、ガスが豊富に含まれるシェール層に超高圧で注入することによって、各所に亀裂を入れてガスを搾取する方法です。搾取方法としてはとても効率的なものの、環境面での深刻な懸念事項も多く、議論が絶えません。懸念される問題点はこのビデオに詳細記されています。

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では、化石燃料の問題のうち、もっとも頻繁に指摘される2点を取り上げてみましょう。


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7.07.2015

エネルギー、車、テスラと変える世界 ---3

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エネルギーストーリー(その2)

じゃじゃ(龍)ドラゴンならし


人間は風や水をコントロールして、そのジュールを自分たちに役立てられるようになったものの、ジュールがギッシリ詰まった「火」はとなると、その近くに寄り集まったり、料理したりとか、そのままの状態で使う以外、どうやってうまく利用できるのか長い間考えつきませんでした。「火」は手に負えないドラゴン。どうやって手懐けられるのか誰にも分からなかったのです。

「蒸気」が登場して、やっとその壁がぶち破られました。

「火」のジュールはそのままでは使いづらいものです。でも、その熱ジュールを水に向けると、水の分子はだんだん興奮してきて動き回り始めます。そのうちに興奮が高まって水面から飛び出してしまう。下から燃え盛る火に煽られて、蒸気は力強くプッシュし続けます。それまでどうして扱っていいのかわからなかった「火」の熱ジュールを、パワフルな蒸気のジェットに変える事によって、やっとコントロールする糸口が見つかったのです。

「蒸気」という道具を手にして、18世紀のイノベーターたちはこぞって発明に取り組みました。他とは比べ物にならないパワフルなジュールを使えるようになって、それまでは想像も出来なかったようなアイディアを試せる時代に突入していきました。めざましい技術の進歩で、突破口が突破口を産み、壁がどんどん破られて行った結果、19世紀の初めには、人類の歴史上もっともインパクトの強い発明と言われる「蒸気エンジン」が誕生したのです。

ピューピューと熱く息巻くやかんを想像してみてください。蒸気が噴き出しているやかんの口にチューブをつけて、その先を口が2つあるシリンダーの一方に繋げると、ものすごい勢いで蒸気がシリンダーに押し込んで来ます。反対の口を少し開けて蒸気を逃がしてやる事によって、蒸気のパワフルな流れが生まれます。この流れを利用してシリンダー内のピストンを往復運動させるのが蒸気エンジンです(極度な単純化)。使われる車体によってピストンの往復運動はいろいろな形を取れます。機関車を例を取ると、ピストンに繋げられた棒が前後して車輪が回転する仕組みになるのです。


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蒸気エンジンができて、帆船に代わって蒸気船が、馬車に代わって機関車がどんどん作られるようになりました。工場も水車からもっと効率のよい蒸気車輪へと切り替えられていきました。

膨大な量の材料や物品を、より早くより遠くまで運べるようになり、工場もより効率的になり、産業革命の火は勢い良く燃え上がりました。産業革命は「蒸気」が原動力という人もいますが、蒸気はただの仲介人です。何十万年もの間、燃焼効果の恩恵をそのまま受けるだけしかすべを知らなかった人類も、やっとじゃじゃ(龍)ドラゴンを手懐けることに成功したのです。そうです。産業革命の原動力は「火」なのです。

宝を掘り当てた!

「火」の力を手中に収めた人類は、そのパワーをつくり出すために、燃やすことに熱中するようになりました。それまではなにか燃やしたいと思ったら、出歩いて木を探してくればよかったのですが、もうとても木だけでは足りません。

実は以前から他にも燃やせるものがあるのに気づいてはいたのです。英国では黒い石を海辺で拾ってきて、木と一緒に燃やすことがよくあり、これを石炭と呼んでいました。

困ったことに、地表で手に入る木と違って、ほとんどの石炭は地面を掘らなければ手に入りませんでした。産業革命の火を燃やすため、英国人はどんどん石炭を掘り始めました。産業革命がヨーロッパやアメリカに広がるにつれて、それぞれの地でも石炭を掘り始めました。膨大な量の石炭が必要だったのです。

こぞって掘っていると、燃える気体(天然ガス)が詰まった地下洞や、ベットリした黒い燃える液体(原油)に満ちた地下湖など、石炭以外のものも掘り当てるようになりました。人は、燃やせるジュールがギューッと詰まった宝物が地中にあるのに気づかずに、長い間地表を歩き回っていたのですね。犬が手に入れた骨を埋めようと、森に来て地面を掘っているうちに、思いがけず、おいしく焼き上がった肉がゴマンと詰まった巨大な洞窟を見つけたようなものです。

焼肉で溢れんばかりの洞窟を見つけた犬はどうするか?立ち止まって、どう処分したらいいのかと冷静に考えると思いますか?食べたら体を壊さないかなと心配すると思いますか?とんでもない!がむしゃらに食べまくるのみです。我を忘れて、ものすごい勢いで。

こうして19世紀を通して、至る所に石炭の炭鉱と石油のリグが作られていきました。新しく見つけたジュールの宝を燃やしながら経済は成長し、みな興奮して、新たな素晴らしい技術の革新に駆り立ちました。

蒸気エンジンの開発もそうであったように、電気革命も、多くのイノベーターが数百年にわたって知恵と努力を積み重ねてきて、1880年代にやっとその努力の花が咲きました。「燃える」という無秩序なパワーを、扱いやすく融通がきいて用途の広い「電気」エネルギーに変換することに成功したのです。この電気技術への転換は、今までの歴史上もっとも重要なテクノロジーシフトだといえます。手に負えない「火」の燃焼ジュールを、「蒸気」を仲立ちさせて「電気」に変え、整えた電線のグリッドに送り、長距離送電して、住宅やオフィスビルまで届けた後、必要があるまではおとなしく待機させておくことができるようになりました。そこから先、電気ジュールは、多様なエネルギーに変換することができます。温めて湯を沸かしたり、冷やして氷を作ったり、電灯を灯して部屋を照らしたり、電話をかけて遠くの人と話したり。「蒸気」がドラゴンを手懐けたとしたら、「電気」は手懐けたドラゴンを忠実な魔法使いのバトラーに変えたのです。これで人は飛躍的なパワーを手に入れました。

実は同時期、もう一つの技術革命が進行しつつありました。「火」が船、汽車、工場を動かし、魔法のような電気も使えるようになったものの、個人の交通手段は1775年当時のまま、干し草によって動かされていました。時は19世紀末です。もっと何かいい方法があるはずと、数々のイノベーター達が努力を重ねました。そして、20年かそこらで「火」のパワーで動くシリンダーエンジンを抱えた、大きな金属の馬が至るところを走り回るようになったのです。

石炭、石油、天然ガスの発見が、前例のないイノベーションを引き起こし、次から次へと技術が革新されていきました。これらのテクノロジーの普及によって、更に多くの燃料が必要となり、人はどんどん掘り続けました。ジョン・D・ロックフェラーのスタンダート石油を筆頭に、地下に眠るジュールの宝物を、掘っては引き上げ吸い上げることに専念した会社は、次第に世界最大の企業帝国となっていきました。世界中で一番ハッピーな犬が、どこまでも続く地下洞窟にギッシリ詰まったおいしい焼肉を平らげながら、新たな世界を築いていったのです。

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7.05.2015

エネルギー、車、テスラと変える世界 ---2

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以下は、このリンク先の記事 http://waitbutwhy.com/2015/06/how-tesla-will-change-your-life.html を私が勝手に解釈して書いています。オリジナルの内容にできるだけ沿ったつもりですが翻訳ではありません。

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パート1: エネルギーストーリー(その一)


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エネルギーって、大事。もしエネルギーがなくなったら。。。私たちはこうなっちゃう。

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でも、エネルギーっていったい何なの?

ある辞書によると「物や放射が持っていて、抵抗を押し切ったり分子を変換させるのを可能にする」のがエネルギーなんだそうです。

これじゃちょっと面白くないので、ここでは「何かが何かをするのを可能にする物」ということにしましょう。

厄介なのは、エネルギーには保存の法則がついてまわること。つまり、エネルギーは移したり変えたりはできるけれど、つくったり壊すことは出来ないのです。全て命あるものは何をするにもエネルギーが必要。でもつくり出すことが出来ないのだから、いつも誰かからそのエネルギーを奪ってくるしか手がないのです。

この地球で生きているものが使うエネルギーのもともとの出処は太陽です。地上に風がふくのも雨が降るのも太陽のおかげ。全ての生物圏にパワーを与えているのも太陽。

エネルギーの共通単位はジュール。
「1 ジュールは標準重力加速度の下でおよそ 102.0 グラム(小さなリンゴくらいの重さ)の物体を 1 メートル持ち上げる時の仕事に相当する。(Wikipediaより)」

わたしたち動物は、太陽からの熱と光の恩恵を体外に受けることができます。でも、体内にパワーを与えてくれるジュールは、まず植物が太陽のジュールを受け取って育つところから始まるのです。





これが食べ物の発端。。。植物が太陽のジュールを食べ物にする術を身につけたのです。

ここから後はもう待ったなし。誰も彼も他のジュールを奪うために殺害に奔走します。

この殺害強盗の繰り返しを、「フードチェーン」とやんわりと呼び、殺してそのジュールを盗むのを「食べる」と表現するんですね。

「プレデター」はあなたのジュールを常に狙っている嫌な奴で、「プレイ」はいじめてお小遣いを取り上げたくなるようなめそめそした弱虫です。

ゴールデンルールに素直に従っているのは植物だけ。でも、それは植物には太陽という力強いパトロンがついているから。人間は何でも欲しい時に欲しい物を誰からでも取り上げる、生態系をかき乱すマフィアのボスです。素晴らしいシステムとは言えませんが、これで成り立っています。

しばらくの間はこのシステムで事なく進んでいましたが、数十万年前、人間はあることに気づき始めました。盗んできた新しいジュールを食べるのは楽しいけれど、体内に取入れたジュールを使うのはそんなに楽しくないってことを。精一杯走ったり重たいものを持ち上げてジュールをたくさん使ってしまうより、丸太の上に寝っ転がって長い間体の中に貯めておくほうがずーっと楽なんですね〜。そこで、人間はだんだん賢くなってきて、自分の体の外にあるジュールを使って仕事を済ますにはどうすればいいか知恵を絞り始めました。そうです、奪ってきたジュールを食べるばかりか、キープするようにもなりました。中には鼻持ちならないことも結構やって来ました。




でも、ジュールは生き物だけが持っているわけじゃないんです。私達の周りにはいろんなジュールが浮いたり、渦巻いたり、飛び回っています。人間は、テクノロジーという概念を作り出して、それらのジュールを使う方法も考え始めました。

風車を作り、吹く風のジュールを盗んで機械エネルギーに変えて、食べ物を細かく砕いたり、帆船をつくって風のジュールをコントロールできる運動エネルギーに変えたりしてきました。水は太陽の放射ジュールを吸収して蒸発し、雨になることによって重力ジュールに変わる事ができます。降った雨が地面の上を流れ運動エネルギーになるのを見て、水車やダムをつくってそのジュールを頂戴することも思いつきました。

でも、人間が思いついたジュール盗みテクノロジーの中で、群を抜いて血を騒がせてくれたのは、何かを燃やすことです。風や水はそこをたまたま通過するジュールを取って使うのが精々ですが、何か燃やす時には、長〜い間かけて蓄えられてきたジュールを一挙に解き放つことができるのです。ジュールの爆発ですね。

この爆発が「火」です。火がもたらす熱や光のエネルギーは、とっても便利なのに気づいた人間は、誰もがこぞって「燃やす」ことに熱中するようになりました。


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