7.25.2015

エネルギー、車、テスラと変える世界 ---13

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以下は、このリンク先の記事 http://waitbutwhy.com/2015/06/how-tesla-will-change-your-life.html を私が勝手に解釈して書いています。オリジナルの内容にできるだけ沿ったつもりですが翻訳ではありません。


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車ストーリー(その4)


どうして自動車業界のテクノロジーは、これまで100年の間あまり進歩しなかったのでしょうか?


この2点が主な理由だと思います。

1) 新規に参入するバリアが異常に高いので、アンダードックが入り込む余地がない


新しい自動車メーカーをつくることよりも、大変で面倒臭そうなビジネスを他に思いつきますか?

まず初めに、車一台作って売れる状態になる前に、、、とんでもない額の資金をつぎ込んで工場を買い、車のスタイルはもちろん、使うパーツも全てデザインして、プロトタイプを作り、それを元にもっともっとたくさんの資本を集めて、もっと大きな工場を買い、何千人もの人を雇って、さらに何百万ドルもマーケティングにつぎ込んで、世の中に自分の会社の存在を知ってもらわなければなりません。。。こんなことをするには、自分自身が超金持ちで、よっぽどリスクに耐えられる人でなければなりませんね。自動車のスタートアップに投資するなんて、そんな笑っちゃうようなことに巨額をつぎ込んでくれる投資家などまずいないでしょうから。

次に、利益が出せるようになるには、同じデザインの車を大量に売る必要があります。先に言ったように、車作りには莫大な初期費用がかかりますし、数台作って売るにはマージンが薄すぎるのです。だから、“スッバラシイ!”だけでなく、たくさんの人が買いたいと思うような車を作らないと、自動車メーカーとして成り立ちません。

最後に、ガソリン車は既に最適化されています。無名のアンダードックが、熱帯雨林のキャノピーを下からスゴイ勢いで突き破ろうと思ったら、既に市場にあるものより「ズーッと優れたタイプの車」を作らなければなりません。最適化されたガソリン車の限界を突き破り、それが抱える最大の問題を解決する車。。。汚い排気を撒き散らし続け、どんどん皆のストレスを増やしている車の心臓部分 - エンジン問題にタックルし、解決する車です。ですから、単に長い間誰も成功していない自動車のスタートアップを成功させなければならないだけでなく、「いままで皆が作ってきたものとは異なる優れたタイプの車をつくるスタートアップ」を成功させなければならないのです。

これにチャレンジする人は、膨大な時間とお金を「今までにない優れたタイプの車」の研究開発につぎ込んで、業界全体の開発コストを背負わなければなりません。それに、どうしてこのタイプの車が優れているのか、どうしてこれを欲しいと思うべきなのか、世の中の人を教育するマーケティングのコストも背負わなければなりません。チャレンジする人が成功したら、彼らがたくさんの時間とお金を使って作り上げた消費者のデマンドに他の会社は乗る事が出来、優れたタイプの車は普及していくのです。

アメリカで自動車のスタートアップとして成功したのは、1925年(90年前)のクライスラーが最後だというのも、これでうなずけるでしょうか。ほとんど不可能に近い試みなのです。

こういう訳で、失うものが何もない野望に燃える起業家が作り出すワイルドなイノベーションが、熱帯雨林の下から突き上げてくる心配をする必要もなかった自動車業界は、長い間、しっかりと編み込まれた熱帯雨林キャノピーのキルトに寝そべって、必要な時だけ少しずつ前進しながら、贅沢にのどかにひなたぼっこを楽しんでいました。しかし、ここにも問題はありました。


2) 自動車マーケットのグリッチで、自動車メーカーの最適化が良い世界作りに繋がらない。


先にも言ったように、マーケットがオープンで的確かつ公正とパーフェストな時は、欲はマーケットを最適化する尺度となります。

会社は「どうしたらお金をもっとも儲けられるか?」など、置かれた環境で最適化するのにベストな方法を模索して物事を決めます。しかし、会社が最大の利益を追求することが同時に社会に役立つのは、会社の利益と、その製品やサービスが社会にもたらす価値が、きちんと確かに相関している時だけです。

例えば、私がレモネード・スタンドを始めたとします。とってもおいしいレモネードだったら、買ったハッピーなお客さんが友達に薦めたり、また買いに来たりするでしょう。私がポジティブな価値を提供して、ビジネスもそれと共に成長します。

成功 = もたらした価値 (インセンティブが連携している)

スタンドに来た他のお客さんに、もしハエが浮かんでるレモネードを出したとしたら、そのお客さんはもう二度と帰ってこないでしょうし、友達にも行くなって言うでしょう。害を与えたので、ビジネスも痛手を負います。

成功 = もたらした価値 ー 与えた害(インセンティブが連携している)

でも、もし、私がハエ避けになる薬品を見つけて、それをレモネードに混ぜたとしたら。。。薬品は無味無臭ですが、しょっちゅう飲んでいると、数十年先には健康を害するってことがわかっています。すぐに症状は出ないのでお客さんは気づきませんし、私のレモネードの評判もビジネスにも影響しません。

成功 = もたらした価値 ー 与えた害

与えた害は、計上されないコスト、別名negative externalityとなり、私のインセンティブとお客さんにとってベストなことが一致しなくなってしまいます。私の欲を満たして利益を上げることだけが目的だったら、私は薬品を使い続けるでしょう。だって、そうすることが経済的に奨励されるし、そのほうがお金が儲かるんですもの。

タバコ会社が何十年も人を殺しながら、その罪に問われなかったのは、こういったnegative externalityが理由です。顧客はタバコが健康にどんな影響を及ぼすか知らなかったし、悪い影響が出始めるのに何年もかかり、与えた害に対する罰を課す規則もなかったので、タバコが健康に及ぼす長期的なコストは計上されていませんでした。欲を追求して最適化する観点だけから考えると、タバコ会社は理性的に行動したと言えます。タバコの中のニコチンレベルを上げ、更に、フィルターに小さいガラスの破片を混ぜて、意図的に吸う人に細かい傷をつけ、ニコチンの吸収を促したのも同じ理由からです。タバコを吸う人に与える害は増えるけれど、需要も増えました。害は計上されなかったので、会社にとっては純粋にプラスになりました。そして、タバコ反対キャンペーンなど、タバコの害について顧客を教育しようとする運動が始まると、害に気づいた顧客が恐れをなして需要が減ることを避けるため、タバコ業界は、不誠実な科学者を雇って、反対キャンペーンの根拠と信憑性を疑う情報を流させ、メッセージがきちんと伝わらないようにしました。いつかは気づかれる事はわかっていたのでしょうけれど、できるだけ遅らせて害を隠し続けることが欲を満たす観点からみると良い選択だったのです。

人はこれを悪と呼びますが、タバコ業界はその時の環境パラメーターの中で、自分にベストな結果をもたらすよう行動しただけです。欲はいたって単純な動機で、何でも取れるものは取り、最も最適化するためにあらゆる限界をプッシュします。タバコを例に上げましたが、ファーストフード、放射線を出すコンシューマー・エレクトロニクス、政治家の行動、金融業界など、他多数にも同じことが言えます。


自動車業界では、二酸化炭素排出がnegative externalityです。もし、安くて簡単に作れる車が大気に汚物を垂れ流しても、誰もその支払いや償いを要求しなかったら、作り方を変えると思いますか?

先のタバコの話と同じで、タバコ業界とそれを支えるタバコ会社が、石油業界とそれを支える自動車会社に変わっただけ、短期の肺気腫の代わりに都市のスモッグ、肺がんなど長期の健康障害の代わりに、湾岸都市の水没などを引き起こす長期にわたる地球の気候や環境障害に変わっただけです。



http://www.telegraph.co.uk/news/science/science-news/9209597
Photo: ALAMY via The Telegraph http://goo.gl/u1Pw8m


多数の人が、炭素排気の隠れたコストについて書いています。そして、対立する政局双方の多くの人が、revenue-neutral carbon tax(歳入中立炭素税)というロジカルな解決策を提案しています。

歳入中立炭素税は、炭素税で政府の歳入が増えた分、所得税など何か他の税が同等に減るので、歳入中立となり、政治的に争う必要のないプロポーザルです。

石油の採取からガソリンスタンドまでのサプライチェーン中、どの時点で税金を課しても、ガソリン車を運転するのが高くなるか、石油ビジネスの利益が減るか(もしくはその両方)の効果は変わりません。炭素税は、炭素問題の助長に手を貸している人に、そのコストを支払ってもらううだけです。そして、消費者や会社が別の道を模索するのを手助けします。これは、政府が市場干渉をしているのでなく、市場のグリッチを修正しているだけです。

でも、そうする代わりに、政府は、電気自動車を買う人に税金を控除したり、再エネ業界に補助金を出したりしています。街中のビジネスが道路にゴミを捨てているのに、捨てたら罰金を払わせる代わりに、捨てなければお金をあげると言っているようなものです。以前政府は、自動車会社に排気量ゼロの車を最低何台つくるように強制して排出量を下げようとしましたが、効果は限られたものでした。ジミー・カーターもビル・クリントンもこの規制をある程度強制しましたが、どちらの場合も、次に来た大統領が(レーガンとブッシュ)が職に着くや、その規制は廃止されました。皮肉にも、クリントンが義務付けたハイブリッド車の規制に対し、アメリカの自動車メーカーは何も成し遂げませんでしたが、代わりに、恐れをなしたトヨタは必死にイノベーションに取り組み、プリウスを作り上げました。また、1990年にカリフォルニア政府は、独自のゼロ排気規制を敷こうとしましたが、これに対し、自動車メーカーと石油会社がカリフォルニアに不愉快な圧力をかけ続け、結局2003年に規制は廃止されました。巨大な会社は巨大な影響力を持っているので、政府が変えるために規制しようとしても、骨抜きにされて効果のないものになってしまうのです。

歳入中立炭素税は、どの政党のどの政治家も賛同できるはずなのに、まだ実現しないのは、ビッグ・オイルがアメリカ政府に影響を与えているからです。それ以外の理由は考えられません。

自動車業界の欲は、最適化するため、安全性、快適性、ドライブ・クオリティなどの技術を進歩させてきました。安全性やクオリティの評価レーティングが需要に直結するからです。しかし、炭素を排出しても何もネガティブな影響はないので、炭素の排出は変わりません。欲を満たす方式に、炭素のコストは含まれていないからです。

というわけで、フォード・モーター・カンパニー設立から112年たった今も、有害でオールドファションのエンジンを使っているのは、自動車業界にエンジンを変えたいと熱望させるようなプレッシャーがないという、単純な理由からです。自動車業界の最適化努力により、車は時と共に、より安全に、よりスムーズに、より快適に、より効率良くなってきました。しかし、現代の車の最も明らかな欠陥、大気中に常に汚物を排出していることは手を付けられずにいます。そうし続けても何も支払う必要はないし、ビッグオイルの影響力で政府はそうさせ続けてくれるだろうし、そして、下から業界の熱帯雨林キャノピーを突き破って、別の良い方法があるのを示してくれる人もいないからです。

怖いことです。何かとてつもなく悪いことが起こりつつあって、将来の私たちの生活を本当に脅かそうとしているのに、囚人のジレンマに陥ってしまっています。皆で協力して一緒に変える方が、ずっとずっといいことはわかっているのに、一人ひとりのCEO、ロビイスト、政治家個人には、このまま現状維持するほうが有利なのです。人々は「これが我々の子どもたちの未来なのに、自分たちが台無しにしてしまっている。」とよく言います。でも、何か変える力を持つ人たちにとっては、彼らが今稼げるだけ稼ぐほうが彼ら自身の子供たちにとって有利。。。行き詰まり状態です。

長い間深く根付いて停滞気味の業界は、長い間定着し凝り固まった王朝のようなもの。現状を突き破るのは大変なことです。でも、もっともパワフルなカースト制度でも、うってつけの人が、ちょうど良いタイミングで現れ、影響を与える事ができれば、革命に火がつくものです。


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